ライバル企業がまさかのタッグ 環境問題や人手不足を前に、広がる「協業」
実証実験では、お台場や有明地区の3社のコンビニ計40店舗へ一日に二十数便運行し、移動にかかる時間や荷物の積載量、CO2の削減効果などを調べた。 結果は各社が個別に配送するよりもトラックの走行距離を1割以上短縮でき、積載率も最大3割アップしたという。
実証実験は都心のコンビニ3社で行ったが、今年は地方のコンビニに加え、地場のスーパーにも呼びかけ、共同配送を試みる予定だ。
背景に人手不足
配送の「相乗り」は、食品やビールのメーカーでも広がっている。味の素やカゴメなど食品メーカー5社は2019年4月に共同出資で物流会社、F-LINE(エフライン)を設立し、北海道と九州で共同配送を始めている。 『ルポ トラックドライバー』の著者で、物流ジャーナリストの刈屋大輔氏は、「コンビニや食品メーカーだけではなく、物流を本業にする企業の協業もここ数年で増えています。それだけ待ったなしの状況になっている、ということです」と指摘する。 例えば、人手不足が深刻な長距離トラックでは、ヤマト運輸や西濃運輸など大手4社が手を組み、関東から関西の区間で共同輸送を行っている。1台で大型トラック2台分の輸送力がある全長25メートルのダブル連結トラックを採用し、4社それぞれが荷物を積み込む。この効率化で、ドライバーの運転時間を年間で9157時間削減できるという。国の規制緩和で実現した。
さらに刈屋氏が2020年、驚いたニュースがある。ヤマト運輸が10月、山形や鹿児島など一部の地域でメール便「クロネコDM便」の配達を日本郵便に委託することを発表したのだ。 ヤマトは30年以上前から、手紙など「信書」の配送を独占する郵政省(当時)のあり方を疑問視し、民間に開放するよう国に訴えてきた。クロネコDM便は信書の代替サービスとしてヤマトが始めたものだった。 そのDM便の配達の一部を日本郵便に委託するという決断について、刈屋氏はこう語る。 「『信書』やメール便という縮小する市場の中で、ヤマト運輸と日本郵便が効率化を図るために手を携えた、物流業界において象徴的な年になったと思います」