ライバル企業がまさかのタッグ 環境問題や人手不足を前に、広がる「協業」
花王が着目したのが、使用済み詰め替えパックのリサイクルだ。ただ、パックはポリエチレンやナイロンといった複数の素材を組み合わせて強度や保存性を保っているため、分離するのがそもそも難しい。 花王は2016年から、北海道や宮城県など5自治体で詰め替えパックを回収し、裁断・洗浄して再生樹脂にした上で、ブロックにリサイクルしている。ただ、ブロックではいずれ供給過多になる可能性が高く、コストもかかることが悩みの種だった。 一方、ライオンは2015年から使い終わったハブラシをプランターなどにするリサイクルを進めてきたが、リサイクルの対象を広げることができないか模索していた。
「共同研究、5年前なら実現できなかった」
花王とライオンが、プラスチック削減に向けて共同研究することで合意したのは2019年の夏。以降、約1年かけて具体的な中身を話し合ってきた。 「競合と手を組むことについて、社内的な抵抗感はありませんでしたが、会議の中で(競合と)なぜ組むのか、という議論は一部でありました」 ライオンでプラスチック問題を担当する、サステナビリティ推進部の中川敦仁・副主席部員はこう語る。それでも共同研究に突き進むことができたのは、詰め替えパックのリサイクル開発が1社だけでは限界があることを両社が感じていたからだ。 前述のように、詰め替えパックは複数の素材を組み合わせて作っているためリサイクルが難しい。原料が統一されているペットボトルとは格段の差がある。共同研究ではおもにリサイクルしやすい素材の開発を進めている。
プラスチック問題は待ったなし
両社がリサイクルを急ぐ背景には、中国や東南アジアの廃プラスチックの輸入規制もある。中国は2017年末、これまで受け入れてきた廃プラスチックの輸入を禁止し、日本に衝撃が走った。 貿易統計によると、日本は2017年に約140万トンの廃プラスチックを海外に輸出し、その約半分が中国だった。その後、日本からの輸出量は減ってきたが、それでも2019年は約90万トンにのぼる。 「5年前なら、花王さんとの共同研究は実現しなかったのではないでしょうか。(部署によっては)ミッションに不都合は出るかもしれませんが、プラ問題は今取り組まねばならないという理解がこの1年でかなり進みました」とライオンの中川氏は語る。