ライバル企業がまさかのタッグ 環境問題や人手不足を前に、広がる「協業」
ライバル企業がタッグを組む動きが広がっている。環境問題や人手不足などが、もはや1社だけでは解決できない段階にきているからだ。ただ、タッグを組むまでの意思決定や現場との調整は簡単ではない。企業はどのような局面に立った時に協業を決断するのか。2020年に協業への道を歩み始めた大手企業を取材した。(ライター・国分瑠衣子/Yahoo!ニュース 特集編集部)
花王とライオンがリサイクルで協力
東京スカイツリーの近くにあるイトーヨーカドー曳舟店。地下1階の食品フロアの入り口には、ペットボトルや紙パック、プラスチックトレーなどを入れるリサイクルボックスが並んでいる。スーパーでよく見かけるものだが、曳舟店には他にないボックスがある。 買い物客の女性が、「つめかえパックをリサイクル!」と書かれた回収ボックスに近づく。エコバッグから洗剤やハンドソープの使用済みの詰め替えパック(リフィル)を取り出し、次々と投入した。女性は「買い物に来た時に、ここで詰め替えパックがリサイクルできると知って頑張って集めました。ペットボトルはよく見かけますが珍しいですよね」と話した。
使用済み詰め替えパックの回収は、ライバル2社が昨年10月末から実証実験として同店で行っている。 トイレタリー国内首位の花王と、オーラルケア製品トップのライオン。昨年9月、「詰め替えパックの水平リサイクル技術を一緒に研究する」と発表した。水平リサイクルとは、使用済みの製品がまた同じ製品として生まれ変わるリサイクルシステムのことだ。この水平リサイクルで詰め替えパックの研究は世界初という。 だが、耳目を引いたのは、消費財の分野で競合する花王とライオンが手を組んだことだ。その理由として、両社の抱える課題がほぼ一致していたことが挙げられる。
「日本は世界でも数少ない『詰め替え文化』の国です」と語るのは、花王研究開発部門研究戦略・企画部の瀬戸啓二主席研究員だ。日本石鹸洗剤工業会によると、2019年の時点で、ハンドソープやシャンプーなど8品目の出荷量の約8割が詰め替え製品だという。 本体ボトルの製造にはプラスチックを使用するが、詰め替えパックの普及と容器のコンパクト化で、「プラスチックの使用量は7~8割減」(瀬戸氏)だという。しかし、詰め替え製品が主流になったここ数年は、プラスチックの削減が頭打ちだ。そのため、新しい施策が求められていた。