女性を大切に尊重するのではなく、むしろ檻に入れて閉じ込めてきた…女性差別を正当化してきた「伝統的な精神」
RBGの強い姿勢
また、こんな話も持ち込まれた。大学側は二十人の作業員を解雇しようとしているが、その全員が女性で、男性の作業員は一人もいないというのだ。「これらの女性たちを支える動きが大学内に存在することを目に見える形で示すことが、解雇を防ぐうえで希望になると我々は考えています」、作業員たちのために動いていた活動家はそう書いている。解雇されようとしている作業員たちは、大半が有色人種の女性だった。 RBGはコロンビア大学長に宛てた手紙の中で、この解雇を「深刻かつ大きな代償をもたらす過ち」だとして、「連邦レベルの訴訟に発展しうる道を避ける」ように求めた。この件について念押しするためミーティングにも足を運んだ。さらには、ACLUのニューヨーク支部にも応援を頼んだのだが、これに憤慨したのがコロンビア大学の法学教授ウォルター・ゲルホーンだった。 ゲルホーンはRBGがラトガース大学で職を得られるよう手助けしてくれた人物でもある。ACLUの「ジェントルマン諸氏」に宛てた手紙の中で、ゲルホーンはコロンビア大学に性差別があるという非難はあまりにも性急だと訴えた(RBGはその手紙の余白に怒りを込めてこう走り書きしている。「彼はこの件の本質を見誤っている。とんでもない!!!」)。 ゲルホーンはさらにこう続ける。「目下の出来事」に、わたしはACLUが「時期尚早に騒ぎを起こす傾向があまりにも強すぎる」のではと危惧しております―。「マンスプレイニング(男性から女性への上から目線の説教)」という言葉が生まれるのがまだ数十年先なのが、おしいところだ。でも結局、作業員は女性も男性も一人も解雇されなかった。 RBGはたしかに終身在職権をもった教授だけれど、だからといって必ずしもこれらの闘いを引き受ける義務はなかったはずだ。特に、彼女がその職にあること自体を一部の同僚たちから疑問視されている状況では、なおさら。「彼女がこの大学にいることに、一種の反感はたしかにありました。それに、その職を得たのも、女性を雇うよう大学に圧力がかかっていたからという、ただそれだけの話だという見方もありました」、そう振り返るのはコロンビア大学ロースクールの学生でRBGの教え子だったダイアン・ジマーマンだ。 RBGは、「アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)」という言葉を一部の人々がまるで侮辱のように使っていることを知っていた。「しかし、そうでない人たちは―」、彼女はのちに書いている。「『消極的差別』の時代はようやく終わったのだと知っています」 次回記事『「「セックスの代償を払え」と迫られるのは女性だけ…妊娠した女性軍人が迫られた「退役か中絶か」という選択』へ続く。
イリーン・カーモン、シャナ・クニズニク、柴田さとみ