女性を大切に尊重するのではなく、むしろ檻に入れて閉じ込めてきた…女性差別を正当化してきた「伝統的な精神」
『ロマンティックな家父長制』的精神は女性を閉じ込める檻
一九七三年五月十四日、連邦最高裁は「フロンティエロ対リチャードソン」事件の判決を下した。RBGが初めて最高裁の法廷に立って弁論を行った、あの事件だ。形式的には、彼女は再び勝利を収めた。シャロン・フロンティエロの職務が家計におよぼす影響を、他の同僚の男性軍人よりも小さいものとして扱った軍の規定を、最高裁の判事たちは無効と判断したのだ。ウィリアム・ブレナン判事が読み上げた意見は、あたかも彼女たちの勝利を示しているかのようだった。 「伝統的に、こうした差別は『ロマンティックな家父長制』的精神によって正当化されてきた。これは実質上、女性を大切に尊重するのではなく、むしろ檻に入れて閉じ込める役割を果たしていた」、意見書の中で彼はこう書いている。まるでフェミニストの弁護士たちが言いたかったことそのままだ。けれど、過半数の五人の判事による賛成が得られなかったため、性別による区別のほとんどを違憲とするより広い判決には至らなかった。 唯一の反対票を投じたウィリアム・レンキスト判事は、《ロサンゼルス・タイムズ》紙にこう語っている。「わたしの妻は、男性優越主義者の豚野郎と結婚したという考えはとっくの昔に捨てていますよ。それに娘は、わたしのやることにこれっぽっちも注意を払わない」 RBGはこの裁判で、その後の人生でずっと彼女について回る教訓を得ることになる。RBGはけっして諦めずに、判事にものを教えようとした。でも、のちに彼女自身が認めるように、「人は一日で何かを学ぶことはありません。一般に、社会における変化とは徐々に起こるものだとわたしは思います。真の変化、永続的な変化は、一歩一歩少しずつ生じるのです」。 だから、彼女には忍耐が必要だった。戦略的に動くことも必要だった。そしてたぶん、「ときには少しばかり聞こえないふりをする」ことも。 世界を変えようと燃え立っていた同志のフェミニストたちは、ときおりRBGにそういう考えを促された。「彼女は、一歩ずつ法を整備していくべきだと訴えました」と、ACLUの弁護士だったキャスリーン・ペラティスは振り返っている。「『法廷には次の論理的ステップだけを示しましょう』と彼女は主張しました。そして、次へ、さらにその次へ、と少しずつ進めていくのです。『彼らにあまりたくさんのことを一度に求めないで。勝てるものも勝てなくなってしまう』とね。『この事案はまだ早いわ』と彼女はよく口にしました。わたしたちはたいてい、彼女の助言に従いました。そして、それに反して動いたときは、きまって敗訴したものです」