球界大御所が楽天マー君と元広島“男気”黒田博樹氏を“辛口比較”「田中は黒田にはなれない」
当時、黒田氏は40歳だったがチームは彼から野球に取り組む真摯な姿、メジャー流のトレーニング、そして、打者の内角を有効に使う攻めのピッチングの心得を学んだ。黒田氏が武器としていたツーシームも浸透して取り入れた投手もいた。だが、その年、カープは4位に終わる。黒田氏は11勝8敗、リーグ7位の防御率2.55の成績を残し阪神との激しいクライマックスシリーズ争いでは中4日登板までしたが、あと1勝が届かなかった。だが、翌年は25年ぶりのリーグ優勝。黒田氏は、2年連続の2桁勝利となる10勝8敗の成績で優勝に貢献した。果たしてマー君は黒田氏と同じ“V使者”となれるのか? 広岡氏の見解はいささか否定的だ。 「田中はチームにいい効果をもたらすだろう。ルーキーの早川なんかにしてみれば最高の手本。だが、田中は黒田にはなれない。そもそもチームに復帰した背景が違っている。私の記憶が確かであれば黒田は、高額なメジャーのオファーを蹴ってまで“広島で最後の1球を投げたい”と帰ってきた。メジャーでは毎年1年勝負の単年契約を結び、広島もオフの度に黒田に復帰のラブコールをずっと送り続けてきた。金よりもチーム愛を選んだ。男気と呼ばれたが、その通りだ。では今回の田中はどうか。新型コロナの影響と、田中自身の力に衰えがあると値踏みしたヤンキースは年俸の高い田中よりも安い若手投手2人を選んだ。そこにつけこんだのが楽天だ。しかも1年やればまたメジャー復帰を狙える契約だというじゃないか。当時40歳だった黒田と32歳の田中では置かれた状況が違うがナンセンスだ」 黒田氏は海外FA権を行使して2007年オフにドジャースに移籍。ド軍で4年、ヤンキースで3年プレーしたが、当初の3年契約以外は、すべて1年契約で毎年オフには広島は黒田氏と話し合いを持ち復帰を持ちかけていた。2014年もヤンキースで11勝をマーク。ドジャースが1500万ドル(約16億2000万円)で復帰を呼びかけパドレスは1800万ドル(約19億4000万円)のオファーをしたが、黒田氏は、その高額オファーを蹴り広島復帰を選んだ。推定年俸は4億円プラス出来高で4分の1、5分の1程度である。今回、田中は、新型コロナの影響がメジャー球団の経営を苦しめ、残留を希望していたヤンキースからは満足のいくオファーは得られなかった。希望額とされた1500万ドルに届くオファーを出した球団もあったそうだが、震災から10年目の節目の年でもあり、「悩んで悩んで悩み抜いた」末に楽天復帰を選んだ。楽天のオファーは9億円プラス出来高とされている。 広岡氏の認識には、多少の誤解があり、マー君もまた金より古巣を日本一に導くためのチーム愛を選んだのである。三木谷オーナーも「男気」という言葉を使っている。