「スカイラインを諦めない」はもう無理か? 日産が本気で生き残るための苦渋の決断の可能性とは【ホンダ・日産考察】
日産の星野朝子副社長(当時)は、2021年6月に日本経済新聞が報じたスカイライン開発中止という報道に際して「日産はスカイラインを諦めない」とコメントをした。あれから4年近い月日が経とうとしているがスカイラインは姿を見せない。現状で日産が下す可能性がある「苦渋の決断」とはいったい。 【画像ギャラリー】最近スカイラインに冷たすぎじゃない?新型スカイラインの予想CGを見ないと!!(5枚) 文:ベストカーWeb編集部/写真:日産、編集部
■伝統を守りたいけれど「それどころじゃない」
日産とスカイラインといえば、切っても切れる仲ではないし、スカイラインが日産の歴史に華を添えてきたという事実も大きい。 レースで勝つことを命題づけられたスカイラインは、プリンススカイラインの時代からレースに挑み、GT-Rの登場で「最強」という称号も手にしてきた。もちろんそのDNAは現行のGT-Rやスカイラインにも継承されている。 しかし、そうは言っても冒頭の報道のようにスカイラインはあまりにもテコ入れがなかった。トヨタクラウンが16代目となったいま、スカイラインは13代目で時が止まっている。 しかも2014年に登場した現行型は2024年で10年のモデルイヤーとなったが、報道当時の2021年でもスカイライン廃止論が湧き出てもおかしくないタイミングだった。そこにきて星野朝子氏の「スカイラインを諦めていない」発言で日産への期待は大きくなっていた。
■どう見てもスカイラインへの力の入れ方が……
実際に現行スカイラインはプロパイロット2.0でいわゆる「手放し運転」に対応するなど、日産としてもスカイラインへのブランド力付加には熱心に思えた。しかしなぜかたった3年ほどでプロパイロット2.0搭載モデルは廃止。 ハイブリッドモデルも消え、代わりにV6の3リッターツインターボを搭載した「400R」や「ニスモ」を登場させたが、その手のモデルはニッチな熱狂的ファンには刺さるものの、そこからの進化はあまりない。 ましてやこれまで売れていると日本のファンが信じていた北米インフィニティブランドでも苦戦が続いており、スカイラインは日本でも北米でもパッとしない「どっちつかず」なモデルになってしまった感は否めない。 昔話をほじくり返すようで恐縮だが、V37スカイラインのターゲットカスタマーは「40代前半でタワマン住まいの外資系勤務」なんて話が発表当時に飛び出した。発表当時(2013年12月26日号)のベストカー本誌では開発陣へのインタビューでこう語っている。 ベストカー:「ところで今回は3.5Lのハイブリッドだけという設定ですが、ずいぶんと割り切ったように思います」 日産:「ハイブリッドをやるうえで、今日産で一番パフォーマンスを出せるのがこのパワー卜レーンだということです(中略)開発側としては、新しいスカイラインのパワーユニットは一これですよ、と明確に主張をしていきたいということでこれひとつに絞りました」 ベストカー:「う―ん……。でも、これってフーガのパワートレーンですよね?」 日産:「形式的には同じですが、制御などは一新して、まったく違うものに進化させています」 ベストカー:「う―ん……、そうではないんですよ。例えばですよ、若い頃からスカイラインが好きで乗り続けてきた48歳の男性がいたとします。ある時、クルマを買い替える際に欧州車が欲しくなり、BMW3シリーズに乗り換えました。なぜなら、自分の欲しいクルマとその時のスカイラインが一致しなかったからです。その男性は、スカイラインがモデルチェンジするたびに今度のスカイラインはどうかなと気にしているのですが、今回のモデルチェンジでますますスカイラインは遠くへいってしまった」 10年前ですらこのような分析をされていたにも関わらず、日産の舵取りは軌道修正されなかったし、スカイラインは結局よくわからないクルマになってしまった。 スカイラインを諦めたくないのは日産ファンも、そして日産も同様かと思うが、開発陣の努力も虚しく、経営陣の舵取りの迷走が激しく残る。それだけ大事ならなぜ新型の声が聞こえてこないのだろう。