【速報】「なんで分かってくれんのや」『凶器』も『目撃者』も見つからない殺人事件 捜査の拠り所「ドラレコ」不鮮明画像 1審は懲役16年の判決 被告が控訴「証拠に基づかぬ的外れの判決に怒り」と弁護団 記者がたどる『判断の分かれ目』と裁判員の苦悩【羽曳野殺人】
6年前、大阪・羽曳野市の住宅街で男性が刺殺された事件。 目撃証言や凶器は見つからず捜査が難航する中、逮捕されたのは現場近くに住む男だった。 ■【動画で見る】ドラレコに映る犯人像 路上で一刺し 捜査機関の頼みの綱は”ドラレコ画像” 「限られた証拠」で迫られる判断
3カ月にわたる異例の裁判員裁判(大阪地裁・山田裕文裁判長)の結末は、検察が立証した状況証拠の数々を退けながらも、被告人を犯人とする有罪だった。 裁判員も「難しかった」と振り返った難解な事件。 判断の分かれ目はどこにあったのか。 20回にわたった長期裁判全てを傍聴した司法記者が振り返る。
■満席の大法廷で始まった裁判員裁判 「私はやっていない」無罪主張した男
2024年6月10日、大阪地裁の大法廷に、山本孝被告(49)は、グレーのスウェットを身にまとい、刑務官の押す車イスに乗って現れた。 緊張しているのか、その表情は終始硬かった。 裁判の冒頭、殺人罪を認めるかどうか裁判長から問われると、山本被告は、はっきりした口調で「間違っています。私はやっていません。私は犯人ではありません」と無罪を主張した。 目撃証言などの『直接証拠』がなく、検察は捜査にあたった警察官など16人もの証人尋問を請求。 『状況証拠』で犯行立証を試みる難解な裁判員裁判の幕が開けた。
■事件から4年後の逮捕 警察の拠り所は『ドラレコ映像』 「難しい事件」と捜査幹部
事件は2018年2月、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)の墓とされる白鳥陵古墳のすぐ横にある閑静な住宅街で起きた。
被害者は、会社員の平山喬司さん(当時64歳)。 背後から横向きに刺された刃物が、肋骨と肋骨の間をすり抜けて心臓に達し、致命傷となった。傷はその1カ所のみだった。
目撃者や凶器は見つからず捜査が難航する中、警察が『拠り所』としたのが、犯人の姿を捉えた現場周辺のドライブレコーダーの映像だった。 事件の1週間後、この映像に映る推定身長180~181㎝で細身の犯人と特徴が似ているとして、山本被告が『捜査線』に浮上。 山本被告には、平山さんの交際相手だった隣人女性との間で植木鉢の置き方を巡るトラブルもあった。 そして4年後に逮捕された。 大阪府警の元捜査幹部は事件発生当時をこう振り返る。 【大阪府警 元捜査幹部】「(ドラレコを見たときは)『やった、いいの見つけた』って。でも画質は悪いよね。この事件が難しい事件っていうのは捜査1課の刑事なら分かるし、よく着手(逮捕)してくれたなという思いが強い。やっぱり遺族のこととか考えたら勝負したいよね」 当時の捜査幹部も『難しい』と感じていた事件。 それは舞台が裁判に移っても同じだ。
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