【速報】「なんで分かってくれんのや」『凶器』も『目撃者』も見つからない殺人事件 捜査の拠り所「ドラレコ」不鮮明画像 1審は懲役16年の判決 被告が控訴「証拠に基づかぬ的外れの判決に怒り」と弁護団 記者がたどる『判断の分かれ目』と裁判員の苦悩【羽曳野殺人】
■決め手の『直接証拠』なし 『状況証拠』から判断 入り込む『推測』
『決め手』となる直接証拠がなく、複数の状況証拠から総合的に判断する裁判の場合、そこには『推測』が入ってくる。 そして、その推測の『物差し』は個人の『常識』や『経験則』に基づくため、1つの答えにたどり着くのが難しい。 私は、裁判員がそれぞれの証拠からどう判断するのか興味を持ちながら、連日、傍聴席でメモを取り始めた(法廷ではパソコンやレコーダーは使えない)。ノートは3カ月で5冊に及んだ。
検察は、事件の前後、現場周辺のドラレコや防犯カメラで住民以外の人物の出入りが確認できなかったことから、「犯人は現場住宅街の住民」と判断。 「ドラレコの犯人像と特徴が似ている」「動機がある」「犯人の『動き』と矛盾しない」などの事実を総合すれば山本被告の犯行といえると立証していった。 これに対し弁護側は、「犯行現場に行くには、カメラに映らない道もある」として『住民の犯行説』を否定。ドラレコの映像も不鮮明であるなど、ことごとく反論した。
■不鮮明なドラレコ映像
私が注目していたのは、やはり捜査幹部が「いいの見つけた」と重視していた犯人が映っているドラレコ映像だった。 初公判では早速、捜査の『拠り所』となったドライブレコーダーの映像が証拠として上映された。 山本被告が捜査線上に浮上するきっかけとなった、捜査員が「山本被告と似ている」とする犯人が映った『貴重な』ドラレコ映像だ。 法廷には傍聴人も見ることのできる大型モニターが2台設置されているが、裁判によって上映されないこともあり、傍聴人は蚊帳の外となる場合も少なくない。 祈るような気持ちで待っていたが、この日は無事、大型モニターにドラレコ映像が映し出された。 初めて見る犯人の姿…。 しばらくモニターを見つめたあと、弁護人の隣に座る山本被告に視線を移した。 犯人との同一性の証拠になるのかどうか。私は急いで自分が感じたままをノートに書き留めた。 「ドラレコ映像の印象。暗くてカオ全く見えない。服の色などなんとなくわかる。生地や柄はわからない。シルエット、たしかに被告人に似ている」 夜に撮影されたドラレコ映像は、想像以上に暗く、画質が悪かった。 さらに、顔はマスクのようなもので覆われ、検察は眼鏡をかけているというが私の席からはそれすら確認できなかった。 裁判の行方がますます見えにくくなった。
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