イタリア発マルチブランド・リテール、スローウエアに新CEOがもたらす進化
WWD:「イタリアンクラシコ」は、変わらなければ衰退する一方、急激に変わると受け入れられないというジレンマを抱えているように思う。
ブラガCEO:確かに、コンテンポラリー・クラシックの文脈でブランドが進化していくには、単純にデザインを新しくすれば済むわけではなく、形、生地、機能性、ディテール、アーカイブなどの要素で実験をし、折り合いをつけていかなければならない。だからこそ、いわゆる普通のファッションブランドを刷新させていくことよりも難しい。とは言え、例えば「ゼニア」や「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」はクラシックだが、同時に現代的でもある。「イタリアンクラシコ」は、現代的にも進化できる。ただブランドを進化できず、旧態依然としたモノ作りをしているものもいる。素晴らしいプロダクトを作ってはいるが、先ほどの例で言えば「ユニフォーム」のような価値観に固執して服を作っているようなブランドだ。
スローウエアを前進させるため
強化するコミュニケーション
WWD:その中で、スローウエアはどのように進化していく?
ブラガCEO:スローウエアは、縦割り構造の中で、各ブランドの専門性を大事に育ててきたブランド。そのルーツはもちろん大事にしつつ、「ライフスタイル」という概念により大きな力点を置きたいと考えている。だからこそ、この縦割り構造を越えて、進化していきたい。
WWD:具体的には?
ブラガ:私たちのビジネスの核となるメンズウエアについて言えば、商品の企画は、各製造担当者に委ねられてきた。担当者間に十分なコミュニケーションがなかったため、それぞれのブランドで色に統一感がない、などの問題があったのは事実だ。ブランドごとに専門性を高めることは良いことだが、その専門性は檻になってはいけない。またトラウザーズ専門ブランドの「インコテックス」からスーツを発売したとしても、トラウザーズ専門のブランドゆえ、ジャケットにはブランド名がつけられないという実務的な問題も起きていた。ジャケット専門のブランド「モンテドール」でも同様のことが起きたことがある。