〈インターネット時代の書店の生き残り策〉オンライン書店との“共存”から図書館とのハイブリッド戦略まで
インターネット時代の書店の生き残り策
今後、ネット通販やスマホ・タブレット操作に抵抗のない50歳代が高齢層に繰り上がるに従って、オンライン書店や電子書籍の普及率はますます高まっていくだろう。リアル書店はどのような生き残り策を講じればよいだろうか。 リアル書店の強みは、新たな本との偶然の出会いである。「目的買い」の対義語は「衝動買い」だが、この両極端の間にも購買動機がある。 目的買いこそオンライン書店に分があるが、衝動買いはもちろん、衝動買いと目的買いの中間の購買動機にもリアル書店の強みがある。オンライン書店は既知の興味関心を深めてくれるが、リアル書店は未知の興味関心を発見し、拡大してくれる。こうした強みを活かし、近年は、テーマ別の書棚構成をこしらえるなど本との出会いを重視した書店が見られる。 本に囲まれた空間でゆったりとした時間を過ごすのもリアル書店の楽しみだ。カフェを併設したり、ソファを置いたりと立ち読み(正確には座り読み)を促す、いわば滞在型の書店は大型書店を中心に90年代頃からあった。これも、オンライン書店にリアル書店が対抗する作戦のひとつである。 こうしたリアルの強みを活かした書店の先端事例といえば、22年9月に福井県敦賀市のJR敦賀駅前に開業した公設民営書店の「ちえなみき」がある。「新たな学び及び価値を創造するとともに、くつろぎ及び憩いの場」をコンセプトとする敦賀市の「知育・啓発施設」だ。新刊だけでなく絶版本や洋書、古書も含む3万冊超を、本の目利きのプロである丸善雄松堂と編集工学研究所が「文脈棚」と呼ばれる本のテーマや内容に沿って並べており、新たな書籍との出会いを創出している。 ただ、オンライン書店にはない強みを活かしたリアル書店の集客が増えても、購入の段になってオンライン書店、電子書籍を選択されてはたまらない。集客をこぼさずいかに売上につなげるか、リアル書店の強みにフリーライドさせないことだ。