台湾の新総統、「戦争の恐怖からの解放」は中国次第-頼政権発足
(ブルームバーグ): 台湾総統に20日就任した頼清徳氏は、民主主義の台湾に対する威嚇をやめるよう中国に求めた。頼氏は台北の総統府での就任宣誓式に臨み、就任演説を行った。3期連続の民主進歩党(民進党)政権が発足した。
頼氏は「中国に対し、言葉や軍事による台湾への威嚇をやめ、台湾と共に台湾海峡と地域の平和と安定を維持する最大限の取り組みを行い、世界に対する責任を果たすよう求める」と演説。「世界が戦争の恐怖から解放」されるかどうかは、中国政府次第だと指摘した。
元腎臓病医で蔡英文前政権で副総統を務めた頼氏(64)は、米国と中国の対立が激しさを増す中で台湾のかじ取りを担う。頼氏は中国が台湾併合の試みを諦めることはないだろうと認めながらも、中国は台湾と対等な立場で協議すべきだと主張し、中国との関係について現状を維持するというこれまで示してきた公約を繰り返した。
頼氏が台湾の正式名称を用い、中華民国と中華人民共和国は互いに従属するものではないという蔡前総統のスタンスを踏襲した発言をすると、就任演説の中で最も大きな歓声が沸き起こった。
頼氏の就任演説を受け、台湾株の指標、加権指数は一時0.7%下落したが、終値では0.1%高となった。台湾ドルは米ドルに対し0.1%下げた。
頼政権が中国に対しどのような政策で臨むのかを、中国と米国は注視している。2016年に政権に就いた蔡前総統は、台湾が中国の一部であるという中国の主張を拒否し、中国政府は台湾との直接的な意思疎通を取りやめた。
中台関係は今後も冷え込む可能性が高い。中国はかつて頼氏を「戦争の扇動者」と呼び、必要なら台湾との統一に向け武力行使も辞さないと表明した。
頼氏は演説で、半導体や人工知能(AI)、軍事、監視技術、通信産業の発展を目指すと述べ、経済政策の概要の説明。また、賃金を引き上げ、歓迎される投資環境を維持するとも約束した。
中国外務省の汪文斌報道官は北京で同日開いた定例記者会見で、台湾は不可分の中国領土だと主張した。台湾は必ず中国と「統一」されると述べ、台湾の政治がどう変わろうとも、台湾と本土は「一つの中国」であるという事実と歴史を変えることはできないとの認識を示した。