「バルミューダとパナソニック」失速した根本原因、家電で稼ぐのは至難の業、大手と中堅で温度差
「デザインでは先駆者だったが、ほかのメーカーのデザインが良くなり、しかも私たちの製品より低価格で提供されている。そしてそれを乗り越えるだけの販売力が維持できていない」 【グラフで見る】巣ごもり需要の反動減に見舞われた、バルミューダの業績悪化は深刻 新興家電メーカー・バルミューダの寺尾玄社長は5月10日決算会見で、悔しさをにじませてそう語った。同社は2023年12月期決算で、13億7500万円の営業赤字に転落した。 バルミューダは2015年に発売した、パンをおいしく焼けるトースターが大ヒット。その後も電気ケトルや炊飯器など、従来のイメージを覆すようなおしゃれなデザインや斬新なアイデアで一世を風靡した。
2020年には東証マザーズ市場(現グロース市場)に上場を果たし、コロナ禍では巣ごもり需要を捉えて大幅に売り上げを伸ばしてきた。 ■購入層に商品が行き渡った が、足元は反動減に苦しんでいる。赤字だった2023年度から、2024年度は1億5000万円の営業黒字へ大幅改善を目指しているが、5月10日に発表した2024年度第1四半期(1~3月期)は2億3600万円の営業赤字と水面下。前期から続く旧製品の在庫処理などが響いた。
バルミューダの家電は「売れる数が一般的な製品と比べると少なく、買う人たちが買ってしまうとなかなか次の一巡に入りにくい」(寺尾社長)。コロナ禍の特需で潜在的な購入層に製品が行き渡ってしまい、収束すると急激に販売数が落ちた。 追い打ちをかけたのは急激な円安だ。バルミューダは工場を持たないファブレスで、中国や台湾など海外を中心に複数の工場へ製造を委託している。円安によって海外で製造している商品の製造原価が上昇し、採算性が悪化した。
そこで値上げに踏み切ると、さらに売り上げが落ちる悪循環に陥った。すでに撤退したスマートフォン事業のために従業員数を増やしていたこともあり、人件費がかさんで大幅な赤字に転落してしまった。 苦戦を強いられているのはバルミューダだけではない。国内家電最大手のパナソニック ホールディングス(HD)は、白物家電事業の一部を収益性の改善が必要な「課題事業」の1つだと明らかにした。 ■中国家電の”マネシタ電器”に