動物を使わない動物実験、機械学習モデル開発に成功
動物福祉の観点から化粧品や医薬品の開発にともなう動物実験を減らそうと、世界の化粧品、医薬品メーカーは動物実験代替法を研究しているが、ロート製薬は、名古屋市立大学と共同で、コンピューターの中だけで完結するを動物を犠牲にしない機械学習モデルの開発に成功した。 ロート製薬が開発したのは、薬用を含む化粧品に使われる、難溶性物質の眼刺激性を評価する予測モデルだ。これにより。さまざまな化学物質の目への影響を動物実験なしに調査できる可能性が出てきた。 実際に動物を使って評価を行う方法を「イン・ビボ」と呼ぶが、代替法としては、動物から抽出した組織を試験管や培養機の中で評価する「イン・ビトロ」、化学物質だけを使って反応を見る「イン・ケミコ」、そしてシリコン、つまりコンピューターの中だけで評価を行う「イン・シリコ」がある。機械学習を使ったロート製薬の評価法は、化学物質の化学構造情報のみを使って短時間曝露試験法が実施できる、動物を一切傷つけないイン・シリコだ。検証では、イン・ビボ、イン・ビトロでの評価結果とほぼ同じだった。このモデルでは、人工的に合成することが難しくイン・ケミコでの評価ができない物質にも対応できるため、幅広い応用が期待できる。 動物実験をなくす活動は、1954年、イギリスの動物福祉大学連合の人道的動物実験に関する研究から始まった。そこで、動物学者のウィリアム・ラッセルと微生物学者のレックス・バーチは「3R」を提唱した。3Rとは、動物実験の代替法を活用するReplacement(代替)、実験に使用する動物を減らすReduce(削減)、やむを得ず実験に使う場合は苦痛を軽減するRefinement(純化)のこと。 これをもとに、1998年、イタリアのボローニャで開かれた動物実験代替法世界会議にて「ボローニャ宣言」が採択され、日本では2005年の改正動物愛護法にも3Rの原則が盛り込まれた。
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