本当に意味ある?東京都の「週休3日制」、次々と浮かび上がる「懸念の声」
週休3日制で業務はパンクしないのか?
むしろ、1日の働く時間を短くしつつも給料はそのままで休日を減らす形態も、柔軟に選べるようにするのはどうだろうか。 たとえば、1日6時間勤務で週の休日は1日のパターンや、1日7時間勤務で休みが1日+半日、つまり、週休2日以前の午後休みだった土曜日、いわゆる半ドンのパターンなどが考えられる。 筆者の会社には、実際に1日7時間勤務で、月に2日の土曜出社がある会社で働いた経験を持つ社員がいる。その社員によれば、8時間勤務に慣れていると1日の労働時間が短いことで意外なゆとりが感じられたという。ただし、業務量が多い時期に土曜出社が重なると、疲労が蓄積しやすい課題もあったとのことだ。 こうした経験から考えると、東京都の週休3日制の成功を左右するのは、制度そのものではなく、実際の業務量の管理や業務成果を安定して出せる仕組み作りにかかっていると言えそうだ。インターネット上で「サービスの質の低下」を懸念する声が上がっているのも、制度が先行し、人員不足や十分な業務管理が行われないことへの不安が背景にあるだろう。 筆者はやはり、「長い1日の勤務・多い休日」のパターンに加え、「短い1日の勤務・少ない休日」など多様な選択肢も検討すべきだと考える。仕事量や仕事の出来とそれに伴う勤務時間や休日を労働者本人の自己責任と選択に丸投げせず、適切なマネジメントが必要だ。そうでなければ、実生活の課題にフィットしない働き方になる可能性がある。
週休3日制導入の影響と非常勤職員への懸念
ちなみに、今回の週休3日制は正規職員を対象としており、非常勤職員(非正規職員)は対象外と考えられる。非常勤職員の勤務条件や休日の調整は、一般的なパートタイマーと同様に働いた分だけの給料になるだろうか。また、週休3日制を選択する正規職員の業務を非常勤職員が補う形になれば、しわ寄せが生じる可能性もある。この点については、十分な検討が必要だ。 人材紹介や派遣事業を手がける会社の経営者としては、仮に東京都で非常勤職員の比率が増加し、事業機会につながるのであれば歓迎したい。しかし、制度が現場に混乱をもたらし、職員や都民の双方にとって負担が増えるような形では、課題が残る。 冒頭の話に戻るが、むしろ「103万円の壁」を含め、働きたい人が希望通りに働ける環境を整えることが重要だ。長時間働く人、短時間で効率よく成果を出す人、ライフスタイルに合わせて柔軟に働きたい人、それぞれが公平に選択できる制度改革が必要だと考える。
執筆:シニアジョブ 代表取締役 中島 康恵