Honda、AWS上に仮想車両開発環境を構築--SDVの実現に向けた協業へ
Amazon Web Services(AWS)は1月8日、本田技研工業(Honda)のソフトウェアデファインドビークル(SDV)実現に向けて、同社と協業すると発表した。 HondaはAWS上に構築する仮想車両開発の環境「Digital Proving Ground」(DPG)プラットフォームを活用し、SDVの開発に着手する。AWS上にあるHondaのデータレイクとAWSの計算資源や生成AI、IoTサービスなどを統合することで、モビリティーソリューションの提供を加速させるという。また、AWSを活用してSDVの実現に必要な機能を持つ新サービスを開発し、DPGプラットフォーム上に統合していくとしている。 SDVは、クラウドから無線通信によってソフトウェアを更新する「Over The Air」(OTA)を活用することで、安全性やセキュリティ、効率性、エンターテインメント性、利便性を大幅に向上させる。Hondaは、SDVの必要性に対応するため、新しい自動車のモデルを迅速に開発・テストができるスケーラブルでコスト効率の高いインフラを必要としていたという。 同社は、車両開発環境として機能するDPGプラットフォームをAWSのクラウド技術を活用して構築。DPGは、エネルギー消費量を可視化し、性能や走行距離などの車両走行時に発生するデータを収集してAWSに保存する。Hondaは、DPGを利用することで物理的なハードウェアへの依存を減らし、エンジニアが自動車を製造する前にクラウド上で設計・テストを行うことを可能にした。これにより、生産工程全体に要するスケジュールを短縮できる見込みだという。 同社は、クラウド接続と管理にAWSのIoTサービスを活用し、継続的なソフトウェア開発とアップデートを提供する。また、ビデオ処理および分析アプリケーション構築の検討を進めるため、デバイスからライブビデオをストリーミングするマネージドサービス「Amazon Kinesis Video」を活用し、インフラ管理不要でカメラ映像の保存・分析、機械学習(ML)を行う。これらは、車外の不審な動きの検知や衝突などを避けるためのドライバーへの警告に役立つとしている。 HondaではAWSの生成AI技術を活用した複数の実証実験(PoC)を進めている。一例に、電気自動車(EV)ユーザーの充電体験を向上させる新しいソリューションの開発がある。同ソリューションではHondaの知能化技術に、デバイスとクラウドを接続する「AWS IoT Core」と生成AIサービス「Amazon Bedrock」を組み込んでいる。車両から収集したデータをAmazon Bedrockの生成AIモデルで分析し、各ドライバーの行動パターンや志向を理解して現在地やバッテリー残量、周辺の充電ステーション状況を考慮した最適な充電スポットを推奨する。 これらの取り組みによりHondaは、2026年に展開予定の新たなEV「Honda 0シリーズ」や広い充電網から得られるデータを分析することで、充電設備の検索や支払いのシンプル化などで個別最適化した充電体験の提供を目指す。