どんどん増える「清掃ロボ」、アイリスオーヤマ・森ビル・日建設計が導く現場改革
「アイリスオーヤマ」はロボット定着化を図る
いくつか講演も聞くことができた。アイリスオーヤマからは、法人向けサービスロボット事業を手がけるアイリスロボティクス 営業本部本部長の草野 耕蔵氏が「人手不足時代に求められるロボット活用~ロボット導入前診断とアフターサービスの重要性」と題したセミナーを行った。同社は2020年1月~2023年12月までの累計で、5000社に対して約1万台のサービスロボットを導入しているという。 生産年齢人口は減少を続けており、2025年からは本格的に労働力人口が減ると考えられている。中には顕著に労働力が不足する都道府県も出てくる。特にビルメンテナンス業界は2030年までに90万人分が不足すると見られている。もちろんほかの職業との人の取り合いも本格的に始まっている。 一方オーナー側からすれば、値上げ要求は受け入れたくないし、清掃品質は維持したい。清掃業者の経営者は人件費高騰で利益が厳しくなり、人手不足で新規物件を取りに行くことも難しい。現場管理者はスタッフ教育に手間と時間がかかるし、作業がマニュアル化されておらず、スタッフがやめると品質クレームにつながりやすいといった課題を抱えている。現場は現場で、人が休むと回らない。 というわけでロボットの出番となる。ロボットはプログラムされた範囲では正しく動くし、作業がコントロールできる。労働環境も改善できる。アイリスロボティクスが296社を対象に行ったアンケート調査ではすでに3割の会社がロボットを導入しており、「検討中」を加えると過半数を占めるという。草野氏は「これからロボットはどんどん増える」と語った。 導入してない企業はランニングコスト、初期費用、オペレーション、そして求める清掃品質を達成できるのか、安全面やスタッフ教育、そして清掃の場合は顧客先の理解や現場の反発などに懸念を抱いていることが多い。ロボット導入それ自体が直接人件費削減につながりにくいばかりか、むしろ契約先から契約減額を要請されやすそうだと懸念を抱いている場合もある。 導入コストに関しては、本連載でも紹介した「中小企業省力化投資補助金」などを活用する方法もある。ビルメンテナンスも補助金対象に追加されている。アイリスオーヤマでは「ロボット補助金サポートサービス」を6月から開始している。補助金の申請から実証試験の結果報告等の支援を行うサービスで、導入検討企業側は簡単な申し込み入力だけで済むという。 アイリスロボティクスでは「ロボット=無人化」ではなく、あくまで「作業の一部をロボットに任せる」、つまり「拡張」だと考えて最適な運用方法を提案しており、シフト表の作成やコスト削減シミュレーションの作成まで無償で行っているという。草野氏は導入時には機体スペックだけではなくトラブル対応やアフターサポートを重視すべきであり、ロボットオペレーターの育成も重要だと語った。そのために無制限でトライアル機体の貸し出しも行っている。そして営業とは別にカスタマーサクセス部隊を作り、活用定着化をサポートしているという。 アイリスオーヤマ 床洗浄ロボット「BROIT」ビルメンフェア2024 オーナー側が気にする清掃品質についても、同社では必要であればATP検査を実施している。ATP検査とは、細胞には必ず含まれているATP(アデノシン三リン酸)を指標として生物由来の汚れの程度を調べる検査である。「ロボットを走行させることで3割くらいの削減は10日くらいで見込める」とのことだった。