父は80代後半、相続のことを考えるようになりました。母がすべて相続しますし私はひとりっ子、わが家は“争族”の心配はないと思うのですが注意することはありますか?
「争族にならないためには遺言書の作成が有効」「相続税の節税対策のためにタワーマンションを購入した」……。相続にまつわる話題がいろいろあるなかで、今回は知っておかないと損をしてしまうかもしれない基本ルールについて考えます。 ▼亡くなった母が私名義で「500万円」を遺してくれていた! 名義は自分でも「相続税」はかかる?
争族の心配がないからわが家は大丈夫?
2015年1月1日から基礎控除の金額が大幅に縮小されました。これまでの5000万円+(1000×法定相続人の数)から3000万円+(600×法定相続人の数)の変更は、とても大きなインパクトでした。 「自分はひとりっ子なので“争族”の心配もなく、遺言書の作成についても気にしなくて大丈夫。財産は実家+現預金と聞いているので、もし父親が亡くなったら母親が全部相続して、その後母親が亡くなったら残りの財産を自分が相続する予定」と話すのは50代のAさんです。 Aさんは両親と離れて暮らしているので、両親のどちらかが亡くなり(ここでは父親と仮定)、年老いた親がひとりになったら介護施設への入居なども視野に考えています。費用が高額になった場合は、実家を売却して工面することもあります。その可能性も踏まえて、一次相続では母親がすべてを相続することを希望しています。 配偶者には、税額軽減の措置があります。これは配偶者が受け取る遺産の合計額が、「相続財産の法定相続分相当額」または「1億6000万円」の大きいほうの金額までなら相続税がかからない制度です。 また、小規模宅地の特例制度もあります。これは、相続によって取得した財産のうち、被相続人または被相続人と生計をともにしていた親族が事業や居住の用に供していた宅地等について、評価額の一定割合を減額する制度です。居住用宅地等は330平方メートルまで、貸し付け用以外の事業用宅地等は400平方メートルまでについて、相続税の対象となる評価額が80%減額されるものです。 「税額軽減の制度を使えば、相続税を課税される心配はない」とAさんは考え、父親に遺言書を書いてもらうことや家族会議の必要性を感じていませんでした。