父は80代後半、相続のことを考えるようになりました。母がすべて相続しますし私はひとりっ子、わが家は“争族”の心配はないと思うのですが注意することはありますか?
税金がかからなくても申告は必要
「配偶者は1億6000万円まで税金がかからないので納税の心配はない」と考えたAさんですが、申告は必要です。冒頭で基礎控除額が変更されたことに触れました。Aさんの場合は、法定相続人が母親とAさんなので2人です。3000万円+600万円×2人=4200万円となります。相続財産の評価額がこの範囲内であれば、税金はかかりませんし申告も不要です。 参考までに、法定相続人の数と基礎控除の金額は図表1になります。 (図表1)
相続財産の評価額が基礎控除額を超え、配偶者控除の適用を受けるには申告が必要です。申告を怠ると法定相続分で分割されたものとして計算され、納税していない扱いになります。延滞税等が課せられるので注意が必要です。 国税庁ホームページに【相続税の申告】に関する手引きがありますので、ご参照ください(※)。 申告するためには、相続財産を明確にしなければなりません。また、相続税の申告書には下記のような添付書類も必要です。 ●被相続人の出生から死亡までの履歴が分かる戸籍謄本 ●遺産分割協議書の写しまたは遺言書の写し ●法定相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの) 申告には、かなりの手間と時間がかかりそうであることが想像されます。経験者が、「10ヶ月はすぐにやってくる」というのもうなずけます。 大丈夫と思われるご家庭でも、注意点はあるものです。相続について家族で話す機会を持つことが、両親の終活にとって第一歩です。「残された遺族が認知症なので分割協議等が進まない」という事例も多発しています。楽観的にのんびりしていたら、大変なことになる可能性はあります。ご両親と少し、今後のお金について話してみませんか? 出典 (※)国税庁 「小規模宅地等の特例」と「配偶者の税額軽減」を適用した相続税申告書の記載例 財務省 身近な税 Q 親が亡くなりました。遺産を相続する場合にどのような税金がかかるのですか? 国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減 国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例) 執筆者:宮﨑真紀子 ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
ファイナンシャルフィールド編集部