西陣織を世界へ 「五代龍村平蔵」襲名の龍村育さん 躍動する「和」に織物の未来託して 一聞百見
「一人では何もできません。いろいろな分野の力も借りて織物のすばらしさを発信できたら」
五代目としての役目を聞いてみた。
「一番は六代に引き継ぐこと。品質もさらに高めていきたい。世界ではまだまだですからもっと西陣織の魅力を知ってもらいたい」
でも、と少し考えて苦笑した。
「西陣織の神様がいると思っているんです。何しろ550年も続いているのですから。私たちがどうこういうのもおこがましくて、現代に生きる担い手として神様に試されているんじゃないかな」
もちろん、着物を着る人を増やすことも課題だ。特に未開拓といえる男性市場。福井さんとは同世代で「着物男子を増やそう」と意気投合している。
「今、若い男性はすごくおしゃれでスキンケアにも気を使う時代です。着物にも興味を持ってもらいたいですね」
視線の先にあるのは、日本の織物の未来だ。
【プロフィル】龍村育 たつむら・いく 昭和48年神戸市生まれ。初代龍村平蔵は曽祖父にあたる。平成9年日本大学文理学部卒、東京スポーツ新聞社入社。父・旻(きよし)さんが四代龍村平蔵を襲名したのに伴い、平成19年龍村美術織物入社。令和元年社長。今年9月に五代平蔵を襲名した。東京・日本橋高島屋を皮切りに大阪、京都などで襲名記念展を開催。12月17日まで、新宿と名古屋の高島屋でも開催。