「さっさと終わってお酒飲みたい」第168回直木賞の小川哲さん会見(全文)
作家脳の高さ故に読者が付いてこれなくなる恐れは
記者:書かれてまして。私も『地図と拳』見て、細川の大胆な策略にしろ、やはり、作家に学歴とかは関係ないと思うんですが、非常に頭のいい小川さんでないとちょっと生み出せない登場人物もありまして、こうしたご自身の作家脳の高さ故に読者が付いてこれなくなるような恐れとか、そういうものは【カ******01:02:54】。 小川:いや、そんなことは。そんな、自分、そうですね、頭の良さっていうのも、いろんな捉え方があるんで。朝井さんがどういう意図で、どういうふうに、どういうニュアンスを込めて言ってるのかも分からないし、ひょっとしたら冗談として、ジョークとして言ってるのかもしれないんで分かんないんですけど、僕はあんまりそういう考え方をしたことはないですね。ていうか、読者に対して、付いてこれるとかこれないとかっていうのを作家の側が判断するのは大変失礼だと思うので、自分が思うエンターテインメントだったり、自分が思う文章だったり、自分が思う小説を書く、それを信じるっていうことだけだと思います。 記者:分かりました。ありがとうございます。おめでとうございます。 司会:はい、お次の方。はい、じゃあニコニコさん。
『HUNTER×HUNTER』で印象に残るエピソードは
記者:ニコニコ動画の高畑と申します。ご受賞おめでとうございます。 小川:ありがとうございます。 記者:恒例の質問なんですけれども、ニコニコ動画はご存じでしょうか。 小川:あ、もちろん知ってます。 記者:ありがとうございます。ではユーザーの方からの質問、代わりに読ませていただきます。東京都、30代男性の方です。『地図と拳』で孫悟空と呼ばれる人物がとんでもない修行をするパートがあります。この部分は冨樫義博さんの漫画『HUNTER×HUNTER』を意識したと聞きました。『HUNTER×HUNTER』の中で印象に残っているエピソードやキャラクターはありますか。ほかに、修行シーンが好きだったり、修行シーン以外で影響を受けた作品があれば知りたいです。 小川:なんかすごい、どっかで話したんですかね。どっかで話したか、僕の知り合いか、どっちかな気がするんですけど。『HUNTER×HUNTER』で特に好きなのが、ネテロっていうハンター協会の会長の修行シーンで感謝の正拳突きというのがあるんですけど。僕の中で3大修行シーンっていうのがあって。ネテロと、もう1個は明確に覚えてて『半島を出よ』っていう村上龍さんの小説で。北朝鮮の特殊部隊の人が、小石がいっぱい入ったバケツの中に手を突っ込んでいって、もう指が傷だらけになるんだけど、で、だんだん石が細かくなっていって最終的には人の体をなんか切り刻めることができる手刀を手に入れるっていう修行シーンみたいな描写があって、それもめちゃくちゃ好きで。 だから、もう1個は、なんかちょっと今ぱっと出てこないんですけど、自分がその孫悟空の修行シーンを書くときは、その2つを超えるとはいかないけど、ぐらいのシーンが書ければなと思って書きましたね。あと、そうですね、そんな感じです。 記者:すいません、いい質問があと2つ来ているので短めによろしいでしょうか。東京都、30代男性の方です。小川作品の虚構と現実が分からなくなる作風が大好きです。そんな小川さんが人生でついた最も大きなうそを教えてください(言える範囲で)って。 小川:えー。僕、そんなにうそつかない、うそつかないというか、思ったことを結構そのまま言ってしまうんで。そうですね。だから、なんかのエッセーで書いたんですけど、一番大きいかどうかは分かんないんですけど、母親が毎朝作ってくれるトーストがすごいまずくて、小学生のときに。でも食べないと怒られるので、なんとかしなきゃいけなかったんですよ。