「猫エイズ」&骨に異常がないのに歩けない…野良猫”縁蔵”が「自分の居場所」を見つけるまで
一般社団法人動物支援団体「ワタシニデキルコト」の主宰者 坂上知枝さんのもとに、知り合いの餌やりさんから「餌を与えている1匹の猫の後脚が動かなくなっている」と連絡が入ったのは、2022年の10月のこと。 【写真】両方の後脚が動かず猫エイズは陽性。それでも人に懐かず威嚇しようとする縁蔵 本人は飼い猫がいるのと、金銭的に厳しく保護も治療もできないというので、坂上さんが保護することになったという。 推定9歳のオス猫は、縁の下で捕獲されたことから「縁蔵」と名付けられた。 東京、千葉、福島を中心に、動物の保護活動を行っている坂上知枝さんの連載。現在、シェルターを併設した動物病院の設立を準備しているという坂上さんに、これまで出会った保護犬猫とのエピソードを語っていただく。 前編「野良猫を餌付けする『餌やりさん』、困らせる人とそうでない人の『決定的な違い』とは」では、近所を彷徨う野良猫を見つけた時、むやみに餌をあげてはかえって猫を苦しめることになるという理由と、正しくはどうしてあげたらいいのかについて、坂上さんにお聞きした。 後編では、坂上さんが保護した縁蔵のその後を紹介する。
両方の後脚が動かない路上猫を捕獲
「3 日前くらいに片後脚を上げていたのですが、その後、両方の後脚が動かなくなり、ベランダ(餌やり場)で動けずに丸まっています。食欲はあります。どうしたらいいでしょう?」 坂上さんに、そんな連絡が入ったのは、2022年10月のことだった。 「現地に行ってみると、腰から下の力が入っていないようで、これは早く捕獲したほうがいいと判断し、この状態では捕獲器は難しそうだったので大きな網を使って捕まえました。その後、すぐに診察を受けてくれるという病院に連れていき、レントゲン、エコー、血液検査、ウイルス検査をしたところ、骨には異常はないとのことでした」(坂上さん、以下同)
「猫エイズ」は陽性でもほとんど感染しない
発熱もしていたため、解熱剤、抗生剤、ビタミン入り点滴を受け、内服の抗生剤も処方されて帰宅するが、後ろ脚に力が入らない原因はよくわからなかったという。 ちなみに、猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)は陽性だった。猫免疫不全ウイルス感染症は、「猫エイズ」の通称で知られている感染症だ。 「猫エイズは、発症すると、免疫機能が低下させることで、口内炎・リンパ節の腫れ・慢性不全・体重減少などさまざまな疾患を引き起こすウィルスで、喧嘩などの咬傷で猫同士の感染の可能性はありますが、通常の生活では感染の恐れはほとんどないといわれています。 また、環境を整えることでうまく付き合っていける病気ともいわれていて、陽性と陰性の猫の平均寿命には有意差はないとする研究結果も出ています」 とはいえ、脚が動かない原因がわからない上、怖がりな性格、かつ自由に体が動かせないのでほかの犬猫が近くにいるのは縁蔵にストレスを与えてしまうと考え、元気になるまでの仮住まいということで妹宅の室内駐車場に縁蔵のためのスペースとして『縁蔵ハウス』を作りました」