2023年サッカー女子W杯日本招致断念の舞台裏
「投票日が近づき、票の動きがだんだん判明していくなかで、何が日本サッカー協会にとって一番いいのか。玉砕の仕方にもよりますけど、まったく支持されないまま負けることが次のステップにつながるのかと言えば、やはりマイナスというかネガティブな方向へ行きかねない。ここはアジアのなかで一致して次へつなげる、次をサポートしてもらえる方が日本サッカー協会にとって得なのではないか、と」 JFAは2013年12月の理事会で、2023年の女子ワールドカップ開催国への立候補を決議。2016年3月に就任した田嶋会長の陣頭指揮のもとで東京五輪、女子プロリーグの設立と女子ワールドカップをセットにして、女子サッカーの普及と発展をさらに推し進める起爆剤とする青写真を描いてきた。 今月3日には来年9月に船出する女子プロリーグの名称が『WEリーグ』に決定。女性の活躍を意味する「Women Empowerment」の頭文字を取ったもので、東京五輪でのなでしこジャパンの活躍、WEリーグ開幕、そして自国開催の女子ワールドカップを「ホップ、ステップ、ジャンプ」になぞらえた。 特にワールドカップ招致を推し進めてきた田嶋会長は、3月上旬にオランダ・アムステルダムで行われたヨーロッパサッカー連盟(UEFA)の理事会および総会に出席。ワールドカップ招致へ向けたプレゼンテーションを行い、その後、ニューヨークへ向かってアメリカ選出のFIFAカウンシルメンバーとも会談。帰国後に新型コロナウイルス感染が判明し、入院生活を余儀なくされた経緯もある。 「おそらくはUEFAの総会あたりで、罹ったのではないかと思っていますが……」 新型コロナウイルスへの感染経路に関して苦笑いを浮かべた田嶋会長は、招致活動に投じた金額が約7000万円に達したと明言。その上で「ホップ、ステップ、ジャンプでいきたいと申し上げてきたことを含めて、私に責任があります」としながら、立候補辞退に至った決断を前向きに受け止めた。