「赤いネット入りのミカン」には要注意…15年間フルーツ中心の食生活を続ける男が解説「正しいミカンの選び方」
■ミカン1個で成人が1日に必要なビタミンCの約3割を摂取できる 体内で貯留され、必要に応じてビタミンAに変換されるβクリプトキサンチンの同じ重さあたりの含有量が、食品成分表記載の生フルーツの中で最も多い。ビタミンAの1日推奨量について、Mサイズの温州ミカン1個で、30~64歳の、男性で8%、女性で10%を摂取できる。 ビタミンCについて、同じ重さあたりで、Mサイズの温州ミカン1個は、レモン1.4個分に相当し、1個で12歳以上の1日推奨量の28%を摂取できる。 ・その他の栄養 ヘスペリジンはポリフェノールの一種で、ヒトでの比較実験では、血中の中性脂肪低下、血中尿酸値の低下、高血圧患者の血圧低下、指先の温度低下抑制などの効果が認められている。温州ミカンでは同じ重さあたりで、外果皮の内側の白い部位(アルベド)、次いで外果皮と薄皮に多いので、白いスジや薄皮もできるだけ食したい。 ■ミカンをよく食べる女性は骨粗鬆症のリスクが92%低い ・健康 カロテノイドの1つのβクリプトキサンチンは、温州ミカンに特徴的に多い。また冬に温州ミカンを多く食べる人は、食べない人と比べて、年中、血中のβクリプトキサンチン濃度が高いことがわかっている。 2012~16年にかけて、静岡県浜松市旧三ヶ日(みっかび)町の住民1000人以上を対象とした、血中のカロテノイド濃度と生活習慣病の発症リスクに関する追跡調査の結果が複数発表された。 10年間の追跡調査では、血中のβクリプトキサンチン濃度が高い人は少ない人に比べて、脂質代謝異常症のリスクが34%、肝機能低下(血清ALT上昇)のリスクが49%、2型糖尿病の発症リスクが57%低かった。 4年間の追跡調査では、血中のβクリプトキサンチン濃度の高い閉経後の女性について、骨粗鬆症(こつそしょうしよう)のリスクが92%も低かった。
■「ミカンの果皮入りヨーグルト」で花粉症が改善 2017年、温州ミカンの果皮と花粉症に関する、ヒトでの比較実験の結果が発表された。 実験ではまずスギ花粉症の日本人31名(平均32歳)に、花粉を点眼し結膜炎を起こさせた。その後3週間、毎日150gのヨーグルトまたは温州ミカンの果皮入りヨーグルトのいずれかを食べ続けてもらった。さらに次の3週間は、それぞれもう一方のヨーグルトを食べ続けてもらった。 すると、ヨーグルトだけよりもミカンの果皮入りヨーグルトのほうを食べた方が、目の赤み・結膜浮腫(けつまくふしゅ)・かゆみが有意に改善された。有効成分は、一部の柑橘類の果皮に多く含まれるポリフェノールの一種、ノビレチンと考えられている。 ノビレチンは、同じ重さあたりでは柑橘に多く、中でもポンカン、柑子(こうじ)、シークワーサー、紀州ミカン(小ミカン)などの果皮に多い。 ■「ミカンの食べ過ぎ」で手のひらが黄色くなる理由 カロテノイドの含有量が多い、ミカン、カボチャ、トマト、ニンジンなどを長期間多く摂ると、手のひらや足の裏などが黄色くなる。これは、カロテノイドが表皮や皮下脂肪などに貯留して起きる「柑皮症(かんぴしょう)」(カロテン症)。 顔まで黄色くなると、しばしば「黄疸(おうだん)」(成人黄疸)と間違われるが、単にカロテノイドの摂りすぎによるものであれば健康上は問題がない。 ただし、柑皮症は甲状腺機能低下症・糖尿病・肝疾患・腎疾患などによる、カロテノイドの代謝不良でも起こる可能性がある。 黄疸とは、肝疾患や胆管閉塞(たんかんへいそく)や溶血などにより、血液由来のビリルビンが血中に増え、全身の皮膚が黄色くなる状態のこと。黄疸では白眼も黄色くなるが、柑皮症では白眼は黄色くならないので、両者を区別できるとされる。 ■「焼きミカン」にすることも可能 ・味の薄いミカンをおいしく食べる方法 ①焼きミカン 皮ごとオーブントースターなどで焼く。味が濃くなるのでオススメ。 ②冷凍ミカン 皮をむいて実だけラップに包み、冷凍用保存袋に入れて冷凍保存する。風呂上りや暑い日に食べるとおいしい。 ③具材 カレーなどの濃い味つけ料理の具材として利用する。 ④ミカン鍋 ミカン鍋は山口県周防大島(すおうおおしま)町の名物料理で、栄養価の高い外皮ごと食べられる 〈引用参考文献〉 ・日本食品標準成分表2020/文部科学省 ・日本人の食事摂取基準2020年版/第一出版 ・国民健康・栄養調査報告2019/厚生労働省Webサイト ・Osteoporos Int 2008 Feb;19(2):211-9. ・J Biomed Sci. 2012; 19(1): 36. ・PLoS One.2012;7(12):e52643. ・IOVS Vol.58, 2922-2929 (2017) ・SAGE Journal Vol.20 (1),1981 ・Cutis. 1988 Feb;41(2):100-2. 柑皮症 ・日本内科学会 50巻5号 414-419, 1961 ・西日本皮膚科 Vol.79(1)38-40, 2017 ---------- 中野 瑞樹(なかの・みずき) フルーツ研究家、毎日フルーツ200g推進協会代表 1976年和歌山県生まれ。京都大学卒(農学修士)。元東京大学教員(工学部)。元アメリカ国立海洋大気局 客員研究員。学生時代は沙漠緑化の研究に従事。2003年にフルーツのもつ魅力に目覚め、消費啓発活動を始める。「甘いから食べ過ぎに注意!」と言われるフルーツの体への影響を調べるため、2009年9月から実験的に、水もお茶も摂らない「フルーツ中心にほぼ果実だけの食生活」を続ける。「マツコの知らない世界」など、テレビ出演多数。著書に『中野瑞樹のフルーツおいしい手帳』(河出書房新社)。 ----------
フルーツ研究家、毎日フルーツ200g推進協会代表 中野 瑞樹