「あの人に好かれたい」「誰かに勝ちたい」…あなたの目標は自分を苦しめてませんか?
◇精神的な負担が軽減される目標の立て方 では、どのような目標に切り替えれば精神的な負担が軽減され、「自分を苦しめない目標」にできるのでしょうか。 ポイントは大きく2つあります。 〇 結果ではなく過程(成長)を重視する目標を設定する際には、それが「自分でコントロールできる目標か否か(自分ではコントロールできない「結果」を目標にしていないか)」を、よく確かめてみてください。 「結果」はコントロールできなくても、その「過程」で自分自身をどのように成長させていくかは、自分の意志と努力によってコントロールできます。 また、その成長を通じて「将来どうなりたいのか、どうありたいのか」という、自分の意志に焦点を当てれば、例えば「出世」も「勝利」も「合格」も、それを実現するための「手段」のひとつに過ぎないケースが大半でしょう。 視野を広く持てば、山頂(目標の先にある「理想の自分」)にたどり着くための登山道が複数あることに気づくと思います。 そうすれば、何かひとつ失敗したところで、「俺の人生はもう終わった……」と悲観的に落ち込むことはないのではないでしょうか。 「これがダメなら次はあれで挑戦してみよう」という発想で、本当の意味の「楽観主義者(オプティミスト=選択肢〈オプション〉がたくさんある人)」になり、精神的にも楽になれると思います。 〇 個の欲望から公の欲望へ拡大するここで言う「公の欲望」とは、「自分自身のためだけではなく、自分以外の誰かのためにも何かを実現したい」という気持ちです。 例えば「〇〇大学に合格したい」や「部長になりたい」は「個の欲望(=個人的にかなえたい願望)」ですが、「〇〇大学で△△を研究して社会に貢献したい」や「部長になって〇〇のプロジェクトを推進し、成功させて会社を大きくしたい」は「公の欲望」だと言えます。 「個の欲望」で突き当たるプレッシャーや困難は「個人的な悩み(=「うまくいかなかったらどうしよう……」)につながることが多いですが、「公の欲望」のそれは、大抵の場合、自分一人ではなく誰かの手を借りながら解決しなければならない「公的な課題」です。 個人の場合よりも、問題解決には難しさや大変さが伴いますが、精神的なツラさよりも、むしろ「やりがい」につながりやすいと思います。 誤解のないように補足しておきますが、私は「個の欲望」を否定しているわけではありません。「個の欲望」自体は人間が生きていくうえで大切な原動力だと思います。 「個の欲望」を捨てて「公の欲望」だけにしろ、と言っているのではなく、「個の欲望」を「公(他者)」の範囲まで“拡大”することで、自分にとっても努力しがいのある目標になる、と述べているだけです。 「あまり社会とは関係なさそうな個の欲望、例えば『ダイエットで10キロやせる』をどうやって公の欲望に変えるんだ?」と思われるかもしれませんが、「公」といってもそれほど大げさに考える必要はありません。自分以外の誰かに良い影響を与えようという気持ちがあればそれで十分です。 例えば「ダイエットで10キロやせるまでの過程を子どもに見てもらい、努力の大切さを学んでほしい」でもいいですし、「ダイエットで10キロやせるまでの過程をSNSで発信し、同じようにダイエットを頑張っている人を勇気づけたい」でもいいと思います。 こうした目標なら「過程」も重視しているので、「結果」だけを追い求めて極端で過激なダイエットに走るなどの事態も防ぐことができるのではないでしょうか。 ダイエットやテストの点数を上げるといった目標は、自分の努力次第で「結果」をコントロールできるものですが、「個の欲望」のままにするよりも「公の欲望」にまで広げたほうが、一時的な成果を求める“ズル・無理・無茶”を防ぐことができて、達成したときにも、“より大きな喜び”につながると思います。
小川 清史