パートタイマーが社会保険料の天引きを避けるには、「106万円の壁」と「130万円の壁」のどちらを優先するべき?
■収入の判定方法も違う また、収入の判定方法も異なります。社会保険加入は、パート・アルバイト先が雇用契約書などから所定労働時間や所定内賃金を確認し、要件に該当する従業員に加入を呼びかけることが多いようです。 これに対して、扶養家族になるには配偶者の勤務先の認定を受けるために、自分で収入額を証明する必要があります。扶養に入るための認定では今後1年間の見込み年収を申告しますが、その根拠資料として、過去の給与明細や課税証明書などを添付するのが一般的です。
また、繁忙期の残業などで一時的な収入増があった場合には、パート・アルバイト先にそのことがわかる証明書を発行してもらえば、約2年間(扶養認定が年1回の場合)まで扶養から外れない措置もあります。(106万円の壁を理由にパート・アルバイト先で社会保険加入する場合を除き、)年収130万円以上になってしまったら、その時点で必ず扶養から外れてしまうわけではありません。 どうしても扶養内で働きたい場合には、社会保険の加入要件と合わせて扶養認定の要件もしっかり確認しておくことが大切です。
社会保険に加入すると、年収106万円の場合、健康保険料と厚生年金保険料で月に約1万3000円が天引きされます。年間で約16万円、手取り収入が減ることになりますので、決して軽い負担とはいえません。 ■手取りが減らないようにする支援策もある そこで活用できるのが、2023年から始まった国の「年収の壁・支援強化パッケージ」という支援策です。106万円の壁を超えて社会保険に加入した人については、手当の支給や社会保険料の負担を実質的にゼロにするしくみが設けられています。
たとえば、パート・アルバイト先の企業が社会保険に加入した従業員に手当を支給して収入アップに取り組んだ場合には、国から企業に対して従業員1人あたり3年間で最大50万円の助成金が支給されます。 社会保険に加入すれば、将来に受け取る老齢年金が増える、傷病手当金や出産手当金の対象になるなど、中長期的なメリットもあります。 それでも、短期的な手取り収入の減少は、これまでパート・アルバイトで働く人にとって社会保険加入の大きな阻害要因になっていました。支援策を活用することで、手取りを維持しながら社会保険に加入し、健康保険や年金の保障を手厚くすることも可能です。
ただ、これは国が企業を補助するもので、個人が直接国から受け取れるものではありません。制度を活用するには、企業に手続きをしてもらう必要があります。社会保険の加入で手取り収入が減る心配がある場合には、パート・アルバイト先が制度を導入しているか確認してみるといいでしょう。
加藤 梨里 :FP、マネーステップオフィス代表取締役