なぜ大坂なおみは「あなたは最低だ!」のヤジに涙を流したのか…背景に21年前にウィリアムズ姉妹が今大会で受けた悲劇
テニスのBNPパリバ・オープン、女子シングル2回戦が12日、米インディアンウェルズで行われ、世界ランク78位の大坂なおみ(24)が同24位のシードのベロニカ・クデルメトバ(28、ロシア)に0-6、4-6で敗れた。試合中にヤジが飛び大坂は涙を流しながらプレー。試合後に観客席に呼びかける異例のスピーチを行う事態となった。なぜ大坂は涙したのか?海外メディアの分析とは?
異例のスピーチを求める
大坂は第1セットの第1ゲームで観客から心ないヤジを飛ばされた。 英BBCや米NBCなどの複数メディアによると「ナオミ!あなたは最低だ!」という英語による罵声だったという。 表情を一変させた大坂は、第1セットが終わると、主審に歩み寄り、マイクで観客にヤジを止めるように伝えたいと訴えたが、却下されて第2ゲームも落としてしまった。 動揺を隠せない大坂は、ついに試合中に泣き出してしまった。涙をぬぐいながらプレーを続けたが、コートチェンジの時に大会のスーパーバイザーと協議。試合後にスピーチを行うことが許可されたため、そのまま試合を続行したが、精彩を欠きストレート負けを喫した。 試合後には、クデルメトバの勝利者インタビューの後にコート上でマイクを持ち、涙で何度も言葉につまりながら、観客席のファンにこう語りかけた。 「私はただ(皆さんに)ありがとうと言いたかっただけなの。以前も、ここでヤジられたことはあった。そのときは何も気にならなかった。ここでビーナスとセリーナがヤジられている映像を見たことがある。あなたがまだそれ(ウィリアムズ姉妹がヤジを浴びるシーン)を見てないのなら、ぜひ見てほしい。理由はわからないけど、それが私の頭に浮かび何度も繰り返されてしまった」 大坂が抱くウィリアムズ姉妹の“トラウマ“とは2001年にこの大会であったヤジ事件だ。 ロサンゼルスタイム紙によると2001年の同大会では、ビーナスとセリーナが勝ち進み、準決勝では、ウィリアムズ姉妹対決が実現するところだったが、ビーナスが膝の故障で試合直前に棄権。直後に人種差別的なヤジを受けたという。セリーナが不戦勝で決勝へ進み、キム・クライシュテルスと対戦するためにコートに立つと観客はセリーナにブーイングを浴びせ、その試合を観戦するため、観客席に姿を見せたビーナスと父のリチャード氏もブーイングを浴びた。当時、19歳のセリーナが優勝を果たしたが、この事件にショックを受けて2015年まで、この大会でプレーすることはなく姉のビーナスも2016年までこの大会に参加しなかった。 CNNによると「セリーナは2015年にインディアンウェルズの大会に復帰する前に『14年前(2001年)の経験は、これまでで最も大きな試合に敗れたような思いとして残っていた』と語っていた」という。 当時、ブーイングを飛ばした観客席を多くの白人が占めていたこともウィリアムズ姉妹の心を苦しめたとされている。ウィリアムズ姉妹が、それほどの“トラウマ“を受けた同じ場所でのヤジを大坂は、頭のどこかでフラッシュバックしてしまったのだろう。