名将慕い転校した9人、部員ゼロだった西彼杵から全国へ 「みんな優しくて受け入れてくれた」 地域との固い絆を力に奮闘【春高バレー女子】
◆バレーボール・全日本高校選手権 西彼杵1―2秋田令和(5日、東京体育館) 春高バレー女子の1回戦で初出場の長崎・西彼杵(そのぎ)は秋田令和に1―2(25―13、23―25、22―25)のフルセットの末に敗れた。 ■石川祐希、古賀紗理那…バレーボール・パリ五輪代表の「春高」時代【写真特集】 昨夏の全国総体で8強入りするなど躍進が期待された中での惜敗に、平川結香主将(3年)は「コートに入ってない仲間もいたし、ずっと支えてくれていた地域の方や、親や保護者さんに申し訳ない気持ち」を涙ぐんだ。 感謝の思いに包まれた高校生活だった。平川ら現在の3年生9人は過去15度の日本一に九州文化学園(長崎)を導いた井上博明監督を慕い、2023年に西彼杵へ転任した同監督と一緒に転校した経緯があった。周囲の尽力があってこそ実現し、続けてこられた側面がある。だからこそ「当たり前じゃないことを、本当に自分たちのために周囲の方々がやってくれていた。勝っているところを見せたいと思ってやってきた3年だった」。全国総体で8強に入り、長崎県予選を勝ち抜いて春高への切符をつかむなどした原動力になった。 学校がある長崎県西海市では寮生活を送った。もちろん新たな環境には「不安もあった」。学校のクラスは5人だったところに、平川ら9人が入って一気に3倍近くになった。ただクラスメートは歓迎し、温かく迎え入れてくれた。「受け入れてくれて本当にうれしかった。教室から海が見えるんですよね。景色もきれいで、食べ物もめっちゃおいしいし、本当にみなさんがめっちゃ優しくて」と話す。 クラスメートだけでなく、地域にも手厚く支えてもらった。豚肉や米、押しずしなどの差し入れも頻繁に受けた。昨夏の全国総体の予選で勝利した後に戻った時には、メロンが寮の玄関に山積みになっていた。発熱した井上監督に代わって急きょ監督登録し、今大会の指揮を執った出野久仁子コーチは「もう大人食いしてねみたいな感じだった」と言う。 1度は休部になったバレーボール部が井上監督の転任により復活して約2年。出野コーチは「地域のおじいちゃん、おばあちゃんたちがだんだん元気になって。孫みたいに接してくれるんですよ。スーパーエースがいなくても拾って拾って、ボールを落とさないで、見てる人に元気になってもらえるように。全然バレーを見たことないおじいちゃん、おばあちゃんも、一生懸命応援してくれる。こっちに来てよかったな」としみじみ語る。支えてもらうだけではなく、互いに支え合う関係が少しずつ構築されていった。 かつては大勢の生徒でにぎわったという同校だが、過疎化が進む中で、バレーボールに懸命に取り組む彼女たちの存在は日に日に大きくなった。東京体育館の客席にも地元からはもちろん、首都圏に住むOBOGらも駆けつけ、最後まで諦めずに戦う選手に声援を送った。 あたたかく見守り、受け入れ、支えてくれた地域の人に囲まれた2年。西海市は平川らにとって大切な場所だ。卒業後は関東の大学でバレーボールを続ける予定だが「帰省したらみんなに会いに行きたいです。後輩とかにも会いに行ったりしたい」と話す。〝第2の故郷〟で過ごしたかけがえのない時間を未来に生かしていく。 ▼▼【春高バレー初日 写真特集】福岡工大城東が3度目挑戦で初勝利、初出場の西彼杵は惜しくも涙▼▼