商社で活躍できる人の共通点は?「大物より小心者、優等生よりハングリー」
世界的な原料高騰が続く中、日本の商社業界は追い風を受けている。中でも、伊藤忠商事は財閥系以外の総合商社として異彩を放ち、時価総額を大きく伸ばしている。なぜ伊藤忠は圧倒的な成長を遂げているのか。その答えは、創業以来受け継がれてきた「商人」としての心構えにある。 【全画像をみる】商社で活躍できる人の共通点は?「大物より小心者、優等生よりハングリー」 本連載では、岡藤CEOをはじめとした経営陣に受け継がれる「商人の言葉」を紐解きながら、伊藤忠商事がいかにして「商人」としての精神を現代に蘇らせ、新たな価値を生み出しているのかを深掘りしていく。 連載第8回は、2021年社長に就任した石井敬太COOの話。
「ベートーベンをぶっ飛ばせ」
2021年から伊藤忠の社長COOを務めているのが石井敬太。会長の岡藤と一緒に伊藤忠を業界トップの会社に変えた男だ。石井もまた商人としての稼ぐ言葉を持っている。 石井は同社に入ってから主に化学品を担当し、インドシナ支配人兼伊藤忠タイ会社社長、専務執行役員エネルギー・化学品カンパニープレジデントなどを務めて社長になった。 彼は早稲田大学高等学院に在学していた時、ラグビー部に所属していた。同時期、早大学院ラグビー部は強豪校の國學院久我山を破り、「花園」の愛称で知られる全国高等学校ラグビーフットボール大会に出場した。 運動部出身の人だが、趣味は音楽。もっとも敬愛しているのはジャズのマイルス・デイビスだ。そんな彼が「商人の言葉」として大切にしているフレーズが「ベートーベンをぶっ飛ばせ(ロールオーバー・ベートーベン)」だ。チャック・ベリーの曲で、発売は1956年。しかし、石井が愛しているのはビートルズがカバーしたバージョンだ。ビートルズのセカンド・アルバムに入っている。 石井は音楽の話となると止まらない。 「社長室にレコードのカバーを飾っているんです。『ザ・ビートルズ・セカンドアルバム』のキャピトル・レコード版。僕が小学生の頃、親父がアメリカ出張で買ってきてくれたものです。 1曲目が『ベートーベンをぶっ飛ばせ』。ボーカルはジョージ・ハリソン。A面のオープニングトラックだからこの曲のイントロが始まると、それだけでやる気が出てくる。よし、稼いでやろうという気にさせてくれます。 商人は自分が好きなテーマソングを持っていた方がいいですよ。この曲なんですが、ビートルズの曲と言えばボーカルはジョン・レノンかポール・マッカートニーでしょう。でも、これはジョージ・ハリソン。ヘタウマなギターソロもジョージ。ノリがいい曲だから、これを聞くと本能的にスイッチが入る。始まった!という感じがする」