商社で活躍できる人の共通点は?「大物より小心者、優等生よりハングリー」
「商人魂があればなんとかなる」
「若い頃、化学品の営業パーソンをやっていたのですが、三菱、三井といった財閥系のメーカーに飛び込み営業をしました。その時、頭のなかで『ベートーベンをぶっ飛ばせ』が鳴っていた。財閥系企業へ営業しても普通はなかなか買ってくれません。しかし、たまには条件次第で買ってくれることもある。財閥系商社よりもいい条件を出したら、先方もわかってくれるから。ただ、同じ条件だったら、ひっくり返ることがたびたびでした。 決まった話であっても、先方の担当から電話がかかってくる。 『石井さん、ごめん、上司が同じ系列から買えと言うから』 でもひっくり返されたとしても、挫折でも何でもない。 かえって、『絶対に負けないぞ』と商人魂が出てくる。 財閥系企業の部長にアポイントを取って会いに行ったり、幹部がよく行くという銀座の高級クラブに行ったり……。 クラブで『すみません、初めてご挨拶させていただきます、伊藤忠の石井です』と言ったら、財閥系の幹部が『お前は若いのにこんなところに来てるのか』って言われて。 もちろん、自腹です。そこまでやっても、財閥グループの仕事を取るのは簡単じゃない。ひっくり返されても、キャンセルになっても、飛び込んでいく。効率を考えたらよくないですよ。でも、そうやってあがきながら商人魂を育てていった。 伊藤忠は商人の会社です。そういう商人魂がある。 僕より、岡藤さんが率いていた繊維部門なんかもっとすごい。ド商人ですよ。 繊維の営業パーソンって商売に対して熱心(抜け目がない)で、私がタイで現地法人の社長をやっていた時、洪水(2011年)がありました。繊維のメンバーは洪水になったとたんに、どこから探してきたのか、海のようになった町を移動する為のゴムボートや下半身まで覆う胴付きの長靴を売り歩いてました。商魂たくましいとはこのことで、そういう人間は、どこかの国にポンと放り投げても、何か商売して帰ってきます。 うちは財閥系よりも人は少ない。それでも彼らに伍してやっているのは商人魂があるからです」