“唯一の3年生”MF森隼人が決勝PK弾!! 16年前に1-7完敗、西が丘で“リベンジ”遂げた松山北が初の全国16強「信じられない」
[12.31 選手権2回戦 松山北高 1-0 龍谷富山高 味フィ西] 第103回全国高校サッカー選手権は31日、2回戦を各地で行い、味の素フィールド西が丘での第2試合は松山北高(愛媛)が龍谷富山高(富山)を1-0で破った。唯一の3年生MF森隼人(3年=愛媛U-15)が決勝点となるPKを決め、無失点での2連勝。8年ぶり6回目の出場にして史上初のベスト16入りを果たした。 【写真】「イケメン揃い」「遺伝子を感じる」長友佑都の妻・平愛梨さんが家族写真を公開 1回戦で東海大山形高(山形)を1-0で破った松山北と、那覇西高(沖縄)を0-0で迎えたPK戦で破った初出場・龍谷富山の一戦。いずれのチームも負傷や出場停止のアクシデント絡みで先発を入れ替え、松山北はDF米田倫太朗(2年=愛媛U-15)、龍谷富山はDF松本隼(3年=FCひがしJrユース)とMF溝口陽翔(3年=FC滑川)が今大会初先発を果たした。 序盤から主導権を握ったのは1~2年生主体で大会に臨んでいる松山北。爆発的なスピードを持つ左のFW矢野泰聖(1年=愛媛U-15)、力強い推進力を誇る右のMF河上和嗣(2年=松山市立久米中)の両ウイングバックがサイドを切り裂き、チャンスを広げると、龍谷富山はGK吉田啓剛(2年=富山市立呉羽中)のファインセーブでなんとか切り抜ける。 一方の龍谷富山は守備の要を担うDF宮林渉(3年=STG.FC)が初戦退場による出場停止、トップ下のFW松代大輝(2年=広田FC Jrユース)の負傷が響いて守備に比重を置くしかなくなり、前線でFW横山旺世(3年=富山U-15)が孤立。前半39分にはMF赤田來央(3年=富山U-15)がミドルシュートを狙うも、ゴールを脅かすには至らない。 その後も接戦が続く中で後半25分、ついに試合が動いた。左サイドを途中出場のFW宮本久遠(2年=東温市立重信中)が抜け、カットインから横パスを渡すと、FW大西然(2年=松山市立小野中)が後ろからDF海老椋太(2年=STG.FC)に押されて転倒。松山北にPKが与えられた。 PKキッカーは同期が大学受験のため引退した中、一人チームに残っている背番号10の森。「相手キーパーもあの状況で真ん中に残る選択肢はたぶんない」という貫禄の駆け引きでど真ん中に蹴り込み、先制ゴールを奪った。 今季初失点でビハインドとなった龍谷富山は交代選手の投入で反撃を試みるが、横山の鋭いプレースキックがGK市中磨生(2年=帝人SS)にキャッチされるなど、決定打が出ない。後半アディショナルタイム1分には松山北の大西が決定的なシュート。これは龍谷富山MF山田凰太(2年=Kurobe FC)がスーパーブロックで阻んだが、そのままタイムアップを迎えた。 松山北は2試合連続の完封勝利。公立高教員から退職した後、再任用で母校の指揮官に復帰した兵頭龍哉監督は「危なげなく1試合通してできたと思うけれど、今までの集大成がこのディフェンス力につながっていると思う。点は取れていないけど、ディフェンスということで言えばミスをせずに我慢できる力がついてきたのかなと思う」と手応えを語った。 兵頭監督は2008年度、松山北が46年ぶりの全国大会出場を果たした大会でも同校を率いており、当時は同じ西が丘で行われた初戦(2回戦)で、地元・東京都代表の國學院久我山高に1-7で敗戦。この日の試合後のフラッシュインタビューでは16年越しの悲願に「前はあそこに1-7って書いてあったんですけど、1-0って書いてありますね。良かったです」と冗談まじりに感慨を述べ、場内の笑いを誘っていた。 「最初に出た時は西が丘で久我山の人ばっかりの中、李(済華)さんの相手で、前半こそ1-2だったけど、後半はもう子犬のようになってしまって5点取られて。でも後半になったら松山北の応援をみんながしてくれて、東京の人って温かいなとも思ったんですけど、1-7でやられてしまったんで、試合的には私のリベンジをしてくれたのかなと嬉しいです」(兵頭監督) そんな指揮官だが、戦術面の指導はかつて南宇和高で全国制覇を成し遂げた世代の主将である大西貴コーチに任せているといい、自身は「私はリスクマネジメントを言うだけ」と謙遜する。それでもチームの士気の高さは指揮官の熱量あってこそ。「私はキャプテンだと思っているのでベンチに座ったことはないし、あいつらと一緒に戦って、逆サイド見てろ!とか言う役割も大事だと思う」という姿勢が躍進につながっているのは間違いなさそうだ。 兵頭監督によると、近年苦戦が続いてきた愛媛県勢の選手権2連勝は1989年度に南宇和高が全国制覇を成し遂げて以来、2011年度の済美高に続いて3校目だといい、「2連勝できるとは信じられない」と笑み。ただ、次の一戦は愛媛県勢に取って1992年の南宇和高以来32年ぶりのベスト8入りというさらなる快挙がかかる。 それでも指揮官は謙虚に向き合う構えだ。次の相手は奇しくも08年度と同じ東京都代表。昨年度ベスト4の堀越高という強敵が控える中、「10枚くらい上手じゃないかと思うので、いかにやられないか、どういうふうに“やられるか”を研究したいと思います」と気負わぬ姿勢で意気込んだ。