「無料塾」創設者が語る、格差解消に必要なこと 食料支援と奨学金も実施「教福中道」こだわる訳
公的資金を受けずに「寄付だけ」で運営する理由
近年、自治体の受託事業として企業やNPOが無料の学習支援を行うケースが増えている。しかし、つばめ塾では国や自治体の助成金など、公的な資金はいっさい受けておらず、寄付のみで運営を行っている。その理由を小宮氏はこう説明する。 「私たちが目指す支援が自由にできなくなってしまうからです。例えば、自治体の受託事業として行う場合、場所や開塾の頻度を決められてしまうほか、受験支援はできないなど、指定された枠から外れることはできません。経済的に苦しい家庭の子に必要なのは、公立校の受験対策も含めた個別の学習支援です。公的資金を受けてしまうと、必要な学習支援ができなくなる可能性が高いのです」 公的資金を受けない理由はもう1つある。それは、学習以外の支援も行っているためだ。 「環境が不安定だと勉強どころではなくなりますから、子どもたちに最も必要なのは家庭の安定です。そればかりは私たちにはどうすることもできませんが、私自身が貧困家庭で育っており、少しでも経済的な支援があることが重要であると身に染みて理解しています。そこで、つばめ塾では『学習支援』『食料支援』『奨学金』の給付を3本柱として活動しているのです。この3つは偏ることなく、同じ割合で行っています」 つばめ塾では全国の農家や企業から寄付された米やパスタ、菓子などを生徒に配布している。昨年1年間で配布した米は2.2トンに上る。 「公的支援は公平が原則ですから、家庭の状況に応じて多く配るといったことはできませんが、私たちは子どもが多い家庭には多めにお米やお菓子を渡すことができます。また、つばめ塾では希望者に返済不要の奨学金を給付しています。中学生には塾に来る交通費を全額支給するほか参考書や問題集をプレゼント、高校生には月額3000円を支給。高校・大学に進学した際には教科書代として2万円を給付しています。こうした奨学金制度も公的支援を受けていると自由にできませんから、寄付のみで賄っているのです」 このようなあり方を小宮氏は、「教福中道」と独自の言葉で表現する。教育と福祉の両方を行っていくという意味が込められている。