貯金元手に早期退職…悠々自適なライフスタイル「ファイア」日本でも注目 覚悟も必要
若者世代を中心に米国発祥の「FIRE(ファイア)」と呼ばれる、悠々自適なライフスタイルが日本でも注目されている。会社員として在職中からコツコツ貯金し、早期退職した後は自分のために時間を費やす人生の過ごし方だ。終身雇用や年功序列といった旧来の働き方に縛られることを嫌い、「ファイア」を選んだ人たちは、どのような日々を送っているのだろうか。 【ひと目でわかる】「FIRE」を達成した47歳会社員の資産の推移 ■退職後、世界16カ国を周遊 ファイアは「Financial Independence Retire Early」の頭文字をとった造語だ。直訳すると「経済的な自立」と「早期退職」を意味する。 妻と一緒に大阪市内に住む男性(40)は、営業関連会社の執行役員として、年収2千万円の安定した生活を投げ出し、昨年、ファイア生活に入った。理由は明快だ。 「部下が何百人もいて、やりがいもあった。しかし、自分が本当にやりたい仕事ではなかった。『働かないと暮らせないから働く』『理不尽なことも飲み込む』ことに違和感を覚えた。つまり、会社に依存せざるを得ない暮らしがいやだった。たった一度きりの人生、自分が心から望んでいる人生を思い切り生きてみたかった」 男性は早期退職に備え、不動産投資や株式投資などで生活に困らないほどの収入を確保し、経済的な自立にめどをつけた。その資金で昨年は計約16カ国23都市を旅して回った。「もう1回行きたい。貴重で最高な経験だった」と話す。 男性は現在、「人生はポジティブに変えられることを自分の経験を通して伝えたい」との思いから、インターネットでファイア生活を発信したり、自らが経営者となって教育関連事業を立ち上げたりしている。 ■ひまを持て余すケースも ただ、必ずしも早期退職後にバラ色の未来ばかり手に入るわけではない。 勤務先を退職し、ファイアを果たした東京都内に住む独身の男性(37)。3年前の退職時には株式投資の利益などで5500万円を貯めた。 男性は、退職した会社について「深夜残業や早朝・休日出勤が当たり前だった。先輩や同僚による無視やパワハラも壮絶だった。勤務中に精神的ストレスで倒れて救急車で運ばれたこともあった」と振り返る。