「レース中は不眠不休、山賊や猛獣の恐怖に苛まれ…」 57歳の「鬼軍曹」が挑む、“世界一過酷なレース”の中身…「出場者は全員クレイジー」
田中さんは、自身が好んで使うという「自分に厳しく、人に厳しく」という言葉を挙げる。 「普通は『自分に厳しく、人に優しく』じゃないですか。けれどチームにおいて、弱い人をみんなで助けようとすることはダメだと思っています。なぜならチーム全体のレベルが、その人に合わせて下がってしまうから。そうじゃなく、弱い人をみんなで支えて、チーム力を上げる。それが『人に厳しく』なんです」 優しくすることは罪だと思う、と田中さんは続ける。つらそうだからと簡単に手を差し伸べることは、本人が主体的に努力し、挑戦や成長する機会を失わせてしまうからだ。サポートやアドバイスや叱咤激励しつつ、あくまで自分の足と意思で進むからこそ、限界を超えることができる。そこへ導くのが「鬼軍曹」なのである。
「挑戦しようぜ、とメンバーに呼び掛けるのが“鬼軍曹スタイル”の根本なんです。俺はやるよ、お前らもやるならついて来いよ。ただし、俺は優しくするんじゃなくて、頑張らせる。そして素晴らしい体験を一緒にしようぜ、挑戦してつかみ取ろうぜ、って」 その過程で、厳しい言葉をかけることや、高い成果を求めることもある。だからこそ、ちょっとやそっとのことでチームが崩壊しないように、ゆるぎない信頼関係や共通の目標が絶対に必要なのだと、“鬼軍曹”は笑顔で話した。
■アドベンチャーレースにかかる費用 アドベンチャーレーサーの金銭事情はどうなのか。海外レースの賞金は数千万円のこともあるが、基本的に上位チームで分配されるため、成績によっては一銭も入らないこともある。さらに海外のレースに1回参加すると、渡航費や滞在費などで約500万円もかかる。田中さんのチームは、平均で年3回出場しているので、単純計算で1500万円が必要だ。 普段、田中さんは林業や山での測量、レースなどに帯同して撮影するランニングカメラマン、地図読みの講習会の講師、講演などで収入を得ている。ただ、定職ではないため、収入は決して安定していないという。後援会やスポンサーたちに支えられているものの、カツカツであるのが実情だと明かす。