4年連続最下位→今季暫定5位。「失敗は材料」ポルセイド浜田2年目、村松裕樹監督が浸透させた“食事・睡眠・やる時は100%”の姿勢|フットサル
2024年、ポルセイド浜田が躍進を遂げた。2020-2021シーズンからFリーグに参入した浜田が、4年間で獲得した勝ち点は「18」。勝利したのはたったの4回と、4年連続最下位から抜け出せずにいた。 【映像】Fリーグが誇る“最強”GK先制点の瞬間 しかし今シーズンは17試合のうち9勝を挙げ、勝ち点は「30」と4年間で積み上げてきた記録を大幅に更新。1試合を残し、暫定5位につけている。 チームの躍進をもたらしたのが、昨シーズンから監督に就任した村松裕樹監督だ。 スペイン1部に所属するインテル・モビスターの育成組織での指導経験をもつ村松監督が、浜田にきて最初に感じた課題は、技術以前のところだった。 「正直、基本となる“姿勢”が足りない」 失敗した時の捉え方、ピッチ外でのフットサルへの取り組み方……浜田での1シーズンを終えた村松監督が、2年目で選手たちにすり込んだ“姿勢”へのアプローチとは。新進気鋭の指揮官へのインタビューを通して、最下位を抜け出した浜田飛躍の理由に迫る。 取材・文=伊藤千梅
調子よりも大事な「継続的な挑戦」
──2020年のリーグ参入から初の最下位脱出となりました。ズバリ、今シーズン躍進の理由とは? 正直、自分たちではまだ“躍進”とは思っていません。もちろん順位が上がっていることは良かったと思いますが、まだまだここからです。 そのなかで、昨シーズンよりも成績が上がっているという点では、今シーズンのチームスローガンに掲げた「献身」が鍵になったのではないでしょうか。献身の意味も、チームに対してという意味ももちろんありますが、どちらかと言えば「フットサルに対して献身的に取り組もう」という考えでやっています。もしかしたら、それが良かったのかもしれません。 ──浜田の監督をしていて一番大事にしていることは? シンプルですが「勝つこと」ですね。 昨シーズンまでは、選手たちに対してあまり厳しいことを言っていませんでしたが、今シーズンは、選手たちへのリスペクトをもちつつも、監督として自分の意思を伝えていく機会は増やしています。 決断をする際にもよりシビアに物事をみるようになりました。例えば、登録枠の14人フルでメンバー入りをさせないこともあります。勝利のために、ということはより意識しています。 ──14人の枠がある登録メンバーはどのような基準で選んでいるのですか? その時の調子よりも「継続して挑戦しているか」が大事です。 僕たちは1回の試合をすごく大事にしています。それに伴って、一つひとつの練習も同じように重要視して、最大限良くしようという意識で練習に取り組めているか。それを毎回、継続できるかどうかは見ています。 自分からの視点になりますが、うまさよりも、取り組む姿勢を見ながら、メンバー入りの可否を決めています。 ──“取り組む姿勢”は、どういう部分で見ていますか? 例えば、なにかトレーニングをした時に、その選手にとって得意なこともあれば、苦手なこともあると思います。苦手なことで失敗した時に、どこにマインドを置いているか。失敗をより良くするための材料だと捉えて、向上心をもって取り組むことが必要です。 そこで他責にしてしまう姿は良くないなと思います。練習中は常に前向きに、失敗してもどんどん挑戦して、タフに続けること。それが自分が求める取り組む姿勢です。 あとは怪我がある状態で練習に入ってきて、中途半端に痛がりながらプレーすることを今シーズンは許していません。休むならきちんと休んで、やる時は100%やる。シンプルですが、そこも求めています。 だから、ピッチ内外どちらも大事です。ピッチ内で気持ちを見せてほしいですが、そこにはピッチ外から用意してきたものが表れます。練習が終わってからどれだけリカバリーをして、睡眠や食事を取っているかは大事な要素だと思います。 ──昨シーズンから今シーズンにかけて変化させたそうですが、きっかけはありましたか? 昨シーズンから監督に就任しましたが、1シーズンを通して、正直、思ったよりも基本となる姿勢が足りないと感じました。なので、オフシーズンの間でいろいろと考えて、今シーズンからはより具体的に、やるべきことをピッチ外から選手たちに何度も伝えています。 ──では先ほどの話は、選手たちにも共有されているのですね。 それはどうでしょう(笑)。自分が一つ話をしても、どこまで感じ取るかは選手それぞれで違うと思います。より伝わってほしい選手には自分からもう一度話すこともありますが、ある意味「ここからどうする?」「ここまでは頑張れ」と思っている選手には、あえて言わない時もあります。全部を共有すると自立心がなくなりますし、僕はそこも見たいので。 だから全体ミーティングなどでは常に伝えていましたが、実際にやれているかは選手によって差があります。どれだけ「とにかく挑戦しろ」「失敗は材料だ」と伝えても、捉え方や実際にどう取り組むかは、人によって違います。でもどういうやり方でもいいから、求めるレベルまで来てくれればいいとは思っているんですけどね。 ──あえて選手に委ねる部分もあるのですね。 選手たちには「僕は管理しないよ」と言っています。トップチームの登録は15人で、特別指定を入れたら、17人。その選手たちを一人ずつ「あなたは体重何キロまで落としなさい」「何時に寝なさい」なんて管理することはできません。だからこそ、選手自身が自立して、そういう人たちが集まって、チームをつくっていくやり方しか僕はできません。 ──そういったやり方をしてきて、結果的に昨シーズンから順位が上がっている手応えは感じていますか? もちろん、手応えというか、成長はしていると思います。選手たち一人ひとりが考えて取り組んでくれていると感じていますし、そこから結果につながっていると思います。