親の介護で子供の自由が奪われる日本 帰省で介護も スウェーデンでは同居自体がまれ、「家族介護」は自由意思で
宮本礼子・長谷川佑子「日本とこんなに違うスウェーデンの高齢者医療・介護」
内科医の宮本礼子さんと、認知症専門看護師としてスウェーデンで働いている長谷川佑子さんが、日本とスウェーデンの高齢者医療・介護の現状を比べながら、超高齢社会の日本のあり方を考えます。 【図解】ペットボトルのふたはどう開けている? 開け方でわかるフレイルのサイン
同居する90代母が疎ましい
年末年始、帰省して親の介護をする人もいると思います。読売新聞の「人生案内」に「自由を奪う90代母が疎ましい」という記事が掲載されました。内容は次のようなものでした。 「60代前半の主婦。夫、90代の母と3人暮らしです。(略)。母は足腰が弱り、部分的な介助が必要な『要介護1』ですが食欲もあって元気です。認知症ではありません。買い物や通院は夫が車で連れて行ってくれます。(略)。母は1日約20錠の薬を服用しています。(略)。母は、治療費や薬代が安いことを喜んでいます。若者世代の負担になっていることを自覚しておらず、いらいらします。いつまでこの生活が続くのか。私と夫の自由な時間が奪われていると感じ、母を疎ましく思います。寿命が尽きるまで、施設に入ってもらいたいとさえ思います。どのように母と接していけばいいですか。」(2024年10月25日付朝刊より)
介護施設入所は普通になったが費用や本人の同意が問題
親の介護に対する考え方は、2000年に介護保険制度が始まってから大きく変わりました。それまでは、親の介護は家族が行うものとされていましたが、介護保険制度により、介護は社会全体で支えることになりました。その結果、ひと昔前は親が介護施設に入ると世間体が悪いと思われていましたが、今では普通のこととして捉えられるようになりました。 そして、その数はまだ少ないですが、投書者のように「親の介護のために自分の自由な時間を奪われたくない」と言えるようになりました。しかし現実には、介護施設へ入所するにはお金がかかります(認知症のない要介護1の人が入れる施設は、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅等に限られ、入所費用は高い)。また、娘さんが親を前にして「介護施設に入所してほしい」と言えるかどうか、親は介護施設へ入所することに同意するかどうか、の問題もあります。 この投書については、いろいろな意見があると思います。「親の介護の程度は軽いので、子供は親のためにがまんすべきだ」「ショートステイ等介護保険サービスを利用して子供の介護負担を減らす」などの意見が多いと思います。一方では、「親世代は自立の精神を持つべきで、子供に介護を頼ってはいけない」という意見もあると思います。介護のあり方を考えるために、スウェーデンの家族介護の実情について、長谷川佑子さんに聞いてみたいと思います。(宮本礼子 内科医)