安倍改造内閣「支持」の背景は? 政治学者・中野晃一教授はどうみる?【フル動画&全文】
日本の政治報道の特徴は?
――日本の政治報道は、政権にどのように向き合っているのか。 中野:基本的なジャーナリストとしての職業倫理がどれだけ浸透しているのか問われる。アメリカの場合も、最近では共和党政権は特にそうだが、メディアにずいぶん「手を入れてくる」ので、同じような問題を抱えてはいる。しかし、伝統的にアメリカのジャーナリズムは、権力を監視する役割を担っている。覚悟を決め、権力側とのコンタクトに関してはかなり慎重に、批判的に対応することが前提としてある。 ところが、アメリカでも変わりつつありますが、日本の場合にはそういったような前提がそもそも弱い。極論すれば、朝日新聞も含めて、日本の大新聞は、明治にさかのぼれば、国家側から陰日なたに支援を受けてきた過去がある。読売新聞に限らず、そうした癒着からそもそも育ってきているので、アメリカなど西洋で見られるような対決型、監視型のメディアはそもそも歴史的に育っていない。そして、ここ最近のアメリカや日本では、一部の保守系のメディアが極めて直接的に政争に加わる状況にある。アメリカで言えば、FOXやマードックの帝国がそうです。はたして、本当に客観報道なのか、政治的な立ち位置を明らかにするにしても、明らかに一線を越えているのではないかという振る舞いがある。同じことが、日本でも、特に自民党政権を強烈に支持している産経グループや読売グループに少し見られる傾向だと思います。 それに引き換え、朝日や毎日は、ややおっとりしていて、旧態依然のアプローチをしているようなところがある。政党システムのバランスが壊れてしまっているのと同じような具合に、メディア状況においても、マスメディアを見る限り、ややバランスを欠いた状況になっているのではないかと思います。 ――特に安倍政権のもとで、新聞の論調が賛成と反対に大きく分断されるようになったという指摘もあります。 中野:安倍政権が民主党政権の崩壊のあとに生まれた政権だということが重要です。ここ20年間の間、万年与党であった自民党がその地位を失って、政治改革の流れから政党間競争が激化した。やがて、民主党に野党勢力が収斂して、ついに2009年に政権交代を起こした。その間、13年、16年とかかった状況が全体として見ると失敗に終わった。そこからどう立ち直るのかもわからない。そこで安倍さんが政権に返り咲いたのです。安倍さん個人の資質もさることながら、「裸の王様」と言ったら酷かもしれませんが、こうした外的な条件が、安倍さんが国内で無敵な状況を作り上げたのだと思います。 保守系のメディアはこの時とばかりに安倍さんをもり立て、かなりゆがんだ報道を行う。その一方で、本来であれば国家権力をチェックするはずであったメディアの側は、しばらく安倍さん以外に何もないじゃないか、と考える。自分たちが、ある程度、親近性を持ってやってきた民主党があのような形で終わり、現状ではそれに代わる勢力が見えない、と落ち込み、自信喪失をしている。その結果、現在のような危機的な状況が生じているのだと思います。