安倍改造内閣「支持」の背景は? 政治学者・中野晃一教授はどうみる?【フル動画&全文】
野党の状況は?
――対抗する野党についてはどうか。 中野:そもそも、日本語として、与党、野党という言葉を使っていますが、これらの言葉が適切なのかという議論が、民主党政権が誕生したときにありました。与党というのは「政権に与る(あずかる)党」という意味ですから、まず先に、官僚が作る「政権」というものがあって、そこに後から政治家が関わっていくイメージなのです。つまり明治憲法の認識なのです。しかし、国民主権の憲法で、政治家こそが「政権」を形づくるのだと考えると、「政権党」という言い方のほうが適切ではないか、という議論があります。官僚が「主」で、政治家が「従」なのではない。あくまでも政治家が「主」で、官僚は「従」だ。そう考えると、「与党」という言葉は、まるで政治家がお客さまであるかのような響きがあり、おかしいのではないか、と。 野党という言葉についても、民主党が誕生して間もないときに、「与(よ)党」でもない「野(や)党」でもない、「ゆ党」だ、揶揄されたことがある。現在も、例えば、特定秘密保護法、集団的自衛権に関する論議のとき、野党陣営が「一体になれない」とか「一枚岩になれない」からダメだという論調がおこる。安倍総理は、強行採決を乱発して、強権的な法律の制定をしたように見えたが、「建設的な野党とは協議をした、野党の一部とは話し合った」と言い逃れることができるような状況がある。維新の会、みんなの党、そして結いの党もそうかもしれないが、これらの政党は、本当に野党なのだろうか。 維新の会は、そもそも橋下さんが党首になる前、安倍さんが自民党で総裁に返り咲く前に、安倍さんに党首をやってくれないかと呼びかけた。石原慎太郎さん、みんなの党、結いの党のメンバーも多くも、もともと自民党にいた。政策によっては自民党とまったく重なっている、あるいはもっと右に触れている。そういう政党を果たして野党と言うべきなのか。私は、「衛星政党」と言ったほうが正確だと思います。 ――衛星政党。 中野:ソ連などの旧共産圏の政党制は、野党が「実質的には」存在せず、与党と「衛星政党」の存在が許されていた。もちろん、今の日本はそこまでではないが、ある意味、現在は、万年与党と万年野党の対立構造であった「55年体制」よりむしろ政権与党にとっては盤石な体制です。野党と言うよりは自民党の別動隊、「衛星政党」と言ったほうが正確な政党が多々ある。自民党は「暴走はしてません、建設野党とは話し合っています」と言って、実際には「内輪の議論」をして法案を通していくことができる。この状況は、今の日本の政党システムが議院内閣制の下でバランスを失していて、チェック機能を果たしていない状況にあると言えます。