安倍改造内閣「支持」の背景は? 政治学者・中野晃一教授はどうみる?【フル動画&全文】
安倍政権のメディア戦略
――安倍政権のメディア戦略が長けているということか。 中野:安倍さんは、これまでにも、福島の東電の原発事故の汚染水に関しても「アンダーコントロール」と言ってみたりとか、消えた年金記録についても、「最後の1つまで見つける」、ということを言ったわけですけれども、その後どうなったのか。そういう花火を打ち上げる、メディアの操作をすることについては、師匠である小泉さんからブレーンを引き継いでいることもあり、かなり長けている。そして、メディアも一緒になって、「踊りを踊る」。これが日本の今の状況です。 ですので、5人の女性閣僚を登用したのは、もちろんいいことですが、その中身はどうなのか。そして、もっと大事な問題は、これを続けられるのか、ということです。小泉さんが最初に組閣したとき、2001年だったと思うんですが、田中真紀子さんが外務大臣になったほか、4人、閣僚を女性から登用しました。その後、田中真紀子さんは、更迭され、小泉さんが退任するまでには女性閣僚は元の2人に戻り、期待外れに終わった。 安倍さんも今回、同じような運命をたどる可能性が高い。その理由は、女性閣僚を維持できるだけの女性議員数というのを自民党は持っていないわけですね。特に日本の政治システムでは、民主党がそれを痛感したように、ある程度当選回数を重ねて国会議員としての経歴がないと官僚が政治家をバカにする。ほかの政治家も(女性を)認めない。そんななかで、仮に女性議員が、市民社会で多様な経験を積んでいたとしても、国政の経験が浅い人というのは閣僚として仕事ができないという、大きな難しい問題があるんです。当選回数は、衆議院では5回ぐらいないと据わりが悪い。男性議員で5回以上当選している人はたくさんいるので、ジェラシーもすごい。小泉さんがやったように、民間から登用しようとしても、国会議員で俺は選挙を勝ち抜いてきているのに、なぜ外から入ってくるんだと、反発がある。さらに民間から登用された閣僚は、最初は政治力が伴わない場合も少なくない。こうした客観的な状況を見た場合、5人の女性閣僚を維持できるような条件が整っているとは到底見えない。ましてや、自民党の側で女性議員を増やすという取り組みは、今のところは、議論さえほとんど始まっていない。今回は、トップの部分だけを変えた。そんな自民党で、閣僚の3割、5人も女性を登用し続けるのは、やはり無理ということになる。