eラーニングは業務時間外? 元バイトの投稿が波紋 タリーズは「驚いている」「就業時間内が原則」と説明
タリーズコーヒーで働いていた元アルバイトが、バイトを辞めた理由を「はてな匿名ダイアリー」に投稿し、波紋を呼んでいます。 【画像】タリーズコーヒー 投稿者によれば、「自宅でレシピやオペレーションを完全に全部覚えてこい」と指示されたものの、「全部見て覚えるとなると丸一日はかかる」といいます。さらにその分はアルバイト代は支払われないといい、「納得いかないので全然マニュアルを読んでいなかったら、店長にガン詰めされた」と明かしました。 こうした不満から「タリーズコーヒーで働き始めて3ヶ月。バイトを飛ぶことにした」。つまり、アルバイトを辞めたそうです。
●タリーズはどう答える?
タリーズコーヒーを運営するタリーズコーヒージャパンは、投稿内容について「驚いている」と前置きした上で、「eラーニングについては就業時間内に使用するものであり、自宅での確認を強制するような指示は一切していない」と話します。 同社によると、新人アルバイトの研修に利用するeラーニングは主にフードやドリンクの作り方を動画やテキストを使って教えるもので、対象者にはスマートフォンで確認ができるようにURLを送っているといいます。 内容量については「一気に覚えるとなると丸一日かかるかも知れない」と話す一方、社員や先輩アルバイトが横について直接指導を行うなど、「eラーニングを見るだけで『はい、おしまい』ということは決していない」と強調します。 加えて、新人アルバイトだけでなく、指導に当たる社員も同じアカウントでeラーニングにログインすることで、業務の習得状況を把握するなど「丁寧な指導体制が整っている」という認識のようでした。
●法的には?
労働時間にあたるかどうかは、一般には使用者の指揮命令下にあるか否かで判断されています。 この「指揮命令下」の判断にあたって、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は、労働時間にあたるとされています(厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」)。 具体的には、実際に職場で働いている時間だけでなく、更衣時間や移動時間なども、使用者から義務づけられていたり、余儀なくされている場合には労働時間と扱われます。 eラーニングの場合、個別具体的な事情に応じて、労働時間として扱われる場合と、扱われない場合とがあると考えられます。 本ケースの元アルバイトの方が書いているように、「自宅でレシピやオペレーションを完全に全部覚えてこい」と会社から指示され、eラーニングを視聴することが業務遂行のために必須であった場合には、自宅学習であったとしても、指揮命令下にあるといえ、労働時間にあたると考えられます。 反面、タリーズコーヒージャパンが説明するように、「eラーニングについては就業時間内に使用するものであり、自宅での確認を強制するような指導は一切していない」ということであれば、自宅で労働者がeラーニングを視聴したとしても、その時間は労働時間にはあたらないことになりそうです。 なぜなら、この場合には、eラーニングについて、自宅でも一応確認できるが、いつ学習してもよく、特に労働者の行動を制約するようなものではないことや、あくまでも自主的にスキルアップするために利用可能としているだけにすぎず、労働者が使用者の指揮命令下にあるとは評価できないと考えられるためです。 なお、投稿者の場合、「店長にガン詰めされた」と言っているので、この店長が自宅で勤務時間外にeラーニングを視聴するように強く指示していたのであれば、使用者の指揮命令下にあると評価できるでしょう(労基法10条参照)。 そのため、視聴した時間分の賃金請求は可能です(時効3年。労基法115条、143条3項)。 ただし、当然のことながら視聴していない場合には、請求できません。