安倍改造内閣「支持」の背景は? 政治学者・中野晃一教授はどうみる?【フル動画&全文】
内閣改造報道について
――今回の内閣改造や、政権についてのメディアの報道についてはどうか。 中野:もちろん会社にもよりますが、政治部のようなところは、従来であれば自民党が万年与党だったわけですから、自民党の派閥の領袖であるとか、黒幕のような人に近い人間が出世をして、「大政治記者」になって、その会社の論調を決めることがありました。そんなことが相変わらず続いている部分はあると思います。 政権との近さを踏まえてみてみると、典型的な例で言うとNHKの経営委員に、百田尚樹さんが任命されたときに、朝日新聞も含めて多くのメディアが百田さんを「ベストセラー作家」という紹介をしたわけですね。これは海外ではちょっと考えにくい。安倍さんが百田さんを任命したのは、ベストセラー作家だったから、あるいは、それ「だけ」ではなくて、むしろ百田さんの政治信条や歴史認識が安倍さんに似通っているからなのです。 その点に関してはほぼ触れず、人気のある小説を書いたとか、放送作家であるということで紹介するというのは、やはりミスリーディングですね。今回の女性閣僚の人事に関しても、女性であるとか、女性の政治参加に関心が強いとか、抽象的に女性政策に詳しいというような表現をすると、それはいいことだというふうに当然思うわけですね。 ただ、実際に見てみると、例えばジェンダー平等ということに対して非常に反対してきた人や、夫婦別姓であるとか、グローバルスタンダードになっている取り組みに関しても頭から否定するような人たちが少なからずいると。女性であるはけれども、極めて保守的であるということが任命の要だったわけです。自民党の中でさえ、もう少しリベラルな、進歩的な男女共同参画の在り方を思い描いている政治家がいるわけですが、そういう人たちを飛ばして、無名な人も含めて今回の人選を行った。そこにやはり安倍さんの狙いがあると言えますが、そこに触れた新聞は、あまり多くはないですね。すると、情報の受け手は、「女性が5人も入閣したのはいいことではないか」と素朴に受け止めます。これは、ある種、メディアの情報操作というか、きちんと有権者の知る権利を満たしていないという歯がゆさがある。その点、フィナンシャル・タイムズのような、政治性がそんなに強いというよりかは経済至上主義的な海外の新聞であるにも関わらず、そちらのほうが、むしろ鋭い質問をするということは、日本のメディアにとって正直、恥ずべきことなんじゃないかと思います。