安倍改造内閣「支持」の背景は? 政治学者・中野晃一教授はどうみる?【フル動画&全文】
安倍改造内閣から考える、メディア、野党、選挙制度の問題点
安倍晋三首相は3日、内閣改造を実施し、第2次安倍内閣が発足した。メディアは、女性閣僚を5人に増やしたことについて「女性の登用を前面に打ち出した」と大きく報じた。これに対し、政治学者の中野晃一教授は「女性ではあるけれども、極めて保守的であるということが任命の要。そこに触れた新聞は、あまり多くはない」と指摘する。海外のメディアにコメントを求められることも多い中野教授は、内閣改造を通して見える日本政治の現状をどう考えているのか。政治を伝えるメディアや、対抗する野党はどのような状況にあるのかを聞いた。
政治的なリテラシーが問われる内閣改造の評価
――内閣改造の印象は? 中野:政治についての知識や、興味・関心がどの程度あるかによって、受けるメッセージが違う組閣なのかなという感じがします。一方で、女性閣僚の登用は、表面的には、内閣として何をやりたいのか、何を優先事項に置いているかが、ある程度伝わってくる。他方で、もうちょっと「玄人」、例えば、女性と政治の問題や、女性閣僚の政治信条や政策についての知識があると、見えてくるものがかなり違います。 地方創生に関しても、より裏を見ていくと、いったいどこまで実効性があるのか、何ができるのかという、さまざまな問いが浮かぶ。そういう意味で、メッセージがぼやけていて、なんのための改造だったのかという疑問がある。一般的には、ある程度受けがいいことも理解できます。 ――女性閣僚の登用といっても、過去の発言や資質は、なかなか分からないことです。 中野:そうですね。政治的なバックグラウンドを調べてみると、実際に登用された5人の閣僚のうち4人まではかなり右翼的なというか、復古主義的なジェンダー観や、さまざまな政治問題に関して特定の価値感を持つことがはっきりしている。その意味で、安倍さんに(価値観が)近いということで選ばれたことが分かります。色が付いていないのは小渕優子さん。それ以外の人たちは、一般的な知名度もなく、女性であることだけで期待しても、本当にうまくいくかどうかは、今の段階では分からないと思いますね。 ――改造を発表した記者会見では、フィナンシャル・タイムズの記者が「入閣した女性の過去の発言や所属している政治団体を見ると、例えば、家族構造、女性と仕事、女性の家庭の中の在るべき存在などについて、かなり保守的な意見を持っている方が多くいる」と質問。安倍総理は「結果を見て判断してほしい」と答えました。 中野:そういう言い方は、昨年の参院選の前であれば、通用したと思うんです。だが、今は違う。安倍さんは、側近などから守られていて、やや現実が見えていない。参院選前までは、「アベノミクス」が内閣の重要課題、安倍さんはプラグマティストだということを海外メディアに向けて盛んに言っていた。それがある程度、信じられていた。しかし、その後の政策の方向はどうだったか。特定秘密保護法の内容と進め方、12月の靖国参拝、今年に入ってからは集団的自衛権とその強権的な進め方。中国、韓国との関係。河野談話の見直し。(こうした流れを見て)安倍さんカラーが出てきたと受け止められている。アベノミクスの成果がそれほど見えていない、息をついてしまったという状況のなかで、当初は「アベノミクス」を歓迎したフィナンシャル・タイムズのようなメディアが、「あなたは、かなり復古主義的な保守思想の持ち主なのではないか」という質問をしたのだと思います。なので、(「結果を見て欲しい」という)開き直ったかのような答えは説得力がなかったと思いますね。