au TOMS坪井翔、3冠目は首位の座一度も譲らず「速さ、強さを一番発揮できた年だった」。伊藤監督は現役時代の“3ワイドバトル”を回想
2024年のスーパーGT・GT500クラスチャンピオンに輝いたのは、36号車au TOM'S GR Supraの坪井翔、山下健太組。昨年も坪井と宮田莉朋のコンビで3勝を挙げてタイトルを獲得した36号車だったが、今年も3勝を挙げて文句なしの連覇となった。 【リザルト】スーパーGT第5戦鈴鹿:決勝結果 年間8レースで、なおかつ得点を積めば積むほどサクセスウエイトによる重量増やパワーダウンが課されるスーパーGTにおいて、年間3勝することは容易ではない。しかし36号車のふたりは全車ノーウエイトの開幕戦で幸先の良いポールトゥウインを果たすと、ウエイトが重くなってからの5レースは4位~7位で着実に加点。そしてハーフウエイト→ノーウエイトとなった終盤2戦で共に優勝を飾りタイトルを決めるという、スーパーGTでは王道とも言える勝ち方だった。 全戦入賞で一度もポイントリーダーの座を譲らない、まさに横綱相撲でだったと言える今季の36号車。伊藤大輔監督も、「チーム全体がほぼミスなくやってこれたことがこの結果に結びついたんだと思っています」と記者会見で語った。 そして自身にとっては36号車での3度目のGT500王座となった坪井は、過去にタイトルを獲得した2021年、2023年よりも、強さを発揮できたシーズンだったと振り返った。 「もちろん、それぞれの年に意味はあったと思いますが、1回目は大逆転のチャンピオンで、2回目はしっかり最終戦まで戦ってチャンピオン。そして今年は最終戦を待たずしてチャンピオン……同じチャンピオンでも、そこまでのプロセスが1回目、2回目とは全然違っていたなと思います」 「今年は一度もランキングトップを譲らずにチャンピオンを獲れました。そういった意味では、強さ、速さを一番発揮できた年だったと思います。ライバル勢に対しても、『36号車』には敵わないよね、と思わせられるシーズンにできたと思うので、素晴らしい年だったと思います」 チームルマン時代の2019年以来のGT500王座となった山下は、同じく会見場にいたGT300チャンピオンのJLOC則竹功雄監督に目をやり、「僕初めてスーパーGTのクルマに乗ったのが、JLOCのオーディションだったんです。だから一緒に獲れて嬉しいです。オーディションは不合格だったのか分かりませんが(笑)」と会場を笑わせた。ディフェンディングチャンピオンの一員となったことでプレッシャーも大いにあったようだが、タイトル獲得に十分なパフォーマンスが出せたと一定の満足感を示した。 2年連続でシーズン3勝してシリーズ連覇という、歴史的な活躍を見せたau TOM'S。かくいう伊藤監督も現役時代の2007年、ARTAで3勝を挙げて圧倒的強さでチャンピオンに輝いた経験がある。その当時とチームの雰囲気等で共通する部分はあるかと尋ねると、伊藤監督は結果を残すことでチームのひとりひとりのモチベーションが上がっていき、それぞれが己のすべきことを前のめりにするようになるという点は似ていると語った。 また伊藤監督は、36号車の面々が今季のターニングポイントに挙げた第8戦もてぎでの勝利は、タイトルに大きく弾みをつけてチームの士気が上がったという点で、2007年の第5戦SUGOでの自身の勝利と重なるものがあるという。 当時のスーパーGTでは、サクセスウエイト(当時はウエイトハンデという呼称)が上限の100kgを超えると、搭載ウエイトが50kgになって残りの50kg分がエアリストリクターによる制限に振り替えられることになっていた。伊藤監督曰く、後半戦に向けては「おもりを落とした方が有利」だったという。 SUGO戦は、宝山 TOM'S SC430、TAKATA 童夢 NSX、ARTA NSXによる、今でも語り草となっているホームストレートでの3ワイドバトルが繰り広げられたレースでもあるが、伊藤監督が乗るARTA NSXはそこで勝利してフルウエイト値に到達したことで、一気に王座を手繰り寄せた。 「ちょっとシチュエーションは違いますけど、今年のもてぎ戦で1リス(燃料流量1段階ダウン)入っている状態で優勝して勢いづいた部分と、僕がSUGOで優勝した時のチームの盛り上がり方は、けっこう似ていたかなと感じています」と伊藤監督はしみじみ語った。
戎井健一郎
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