総合楽器メーカーのヤマハが「自前主義」のこだわりを捨て、オープンイノベーションの深耕にかじを切った理由
■ ハードとソフトの両輪経営、ベンチマークは「アシックス」 ──今後ハードもソフトも経営の両輪にしていく中で、ベンチマークになるような企業はありますか。 山浦 どの業種の企業もハードとソフトの融合を目指していく時代ですが、例えば大手スポーツシューズメーカーのアシックスさんの取り組みは大いに参考にさせていただいています。 アシックスさんはここ数年デジタル分野に非常に注力され、高い技術力に裏打ちされたものづくりを維持しながら、シューズをどのように使ってもらうかといったソフト分野を、デジタル技術を駆使して強力に推進されており、ハードとソフトの掛け合わせビジネスが素晴らしいと思います。 われわれが目指すところもまさにそこです。ヤマハの主たる事業フィールドは音楽ですが、音楽ジャンルはさまざまなところと協業余地がありますので、将来、例えばランニング分野で何かご一緒にできることもあるかもしれません。 ──目指すべき方向性を踏まえ、来年度からは3カ年の新中期経営計画が始まります。 山浦 新中計策定に向け、まさに今議論を重ねているところですが、ここ数年でわれわれの事業を取り巻く環境も大きく変わり、楽器や音響機器事業の収益が従前ほどは出にくくなっています。今後、会社全体の事業構造をどのように変えて活路を開いていくべきか、さまざまに思案しています。 また、これまでお話してきたように、ハードとソフトの融合を多方面から進めていき、新たな成長分野を創造していきたい。この2点をどのように両立させながら経営していくかが、新中計の最も大きなポイントになるだろうと考えています。
河野 圭祐