小保方氏のHP開設と繰り返される「流言」の意味
小保方晴子氏が「STAP HOPE PAGE」というホームページを開設したことが3月31日から4月1日にかけて報道されました。時事通信によれば、代理人の弁護士には数日前に本人からメールで連絡されていたといいます。したがって以下、このホームページは小保方氏本人が開設し、運営しているものとして話を進めます。 【写真】「STAP論文」を調査委が否定 再現実験はムダだった? また4月1日ごろから、「STAP現象が理研で再現されていた」という情報の書き込みがネット上で流布しました。 STAP HOPE PAGEにも、ネットに流布している情報のなかにも、現時点で筆者には検証不可能なものもありますが、ある程度までは検証可能なものもあります。小保方氏のホームページに書かれていることの意味と、「STAP現象が再現」という情報について解説してみます。
小保方氏の「STAP HOPE PAGE」
このホームページは全文英語で書かれています。冒頭で小保方氏は “まず私は、2014年に『ネイチャー』で公表されたSTAP論文について、深い自責の念と心からのお詫びを表明いたします。私はそのSTAP論文について深い責任を感じ、科学者として、不注意によるミスを恥ずかしく思います。” と3月25日付で述べています。小保方氏がこれまでの一連の結果は、「研究不正(research misconduct)」ではなく「ミス(mistake)」によるものだと認識していることがわかります。 また小保方氏はこのホームページの目的を、以下のように書いています。 “このウェブページ(ホームページ)を始めた目的は、STAP細胞の作製が成功しているということの確実な証拠を示すであろう情報を科学コミュニティに提供することです。したがって私は、ほかの科学者がそれを実現できることを願って、STAP細胞をつくるための私のプロトコル(手順書)をオープンに提供します。” つまり、このホームページの読者として前提とされているのは科学者であり、その目的は科学コミュニティへの情報提供だというのです。であるとするならば、ホームページの開設という方法は適切ではありません。 小保方氏らは2014年1月に公表した『ネイチャー』の論文と同年3月に公表した「プロトコル」で、STAP細胞を作製した方法を示しましたが、それらは理化学研究所による「STAP現象の検証」、いわゆる再現実験(追試)によって、すでに2014年12月の段階で否定されています(なおこの検証結果は現在、検証の責任者・丹羽仁史氏が論文にまとめて学術誌に投稿しており、その原稿を「bioRxiv」という論文原稿共有サイト(プレプリントサーバー)で読むことができます)。 また同じ2014年12月には、理研の「研究論文に関する調査委員会(第二次調査委員会)」が研究不正を調査した結果として「研究論文に関する調査報告書」を公表し、STAP細胞とされたものはES細胞である可能性が高いこと、新たに2点の研究不正があることを明らかにしました。 また2015年9月には、世界7つの研究グループが、論文やプロトコルの方法を追試(再現実験)したところ、STAP細胞をつくることができなかったと報告しています。この報告は『ネイチャー』の「BRIEF COMMUNICATIONS ARISING」という欄に、小保方氏らの(撤回された)論文に対する批判的コメントとして書かれています(Nature 525(7570):E6-9, 2015)。 また同じBRIEF COMMUNICATIONS ARISINGでは、理研の研究者らがSTAP細胞と思われるものを科学的に調べたところ、ES細胞に由来するものであることが分かったと報告しています。こちらは第二次調査委員会で実務を担当したメンバーが著者になっており、内容もその調査報告書に準じたものになっています(Nature 525(7570):E4-5, 2015)。