とにかく服のシミが取れる「スポッとる」が累計80万個以上のヒット 小売店から門前払い、「3000個の全返品」乗り越えた過去
「門前払い」から始まった販売
店を構えていれば客が来てくれるクリーニング店とは違い、新しい商品は自分から働きかけなければ売れるわけもない。だが最初に足を運んだ大手量販店では、あっさりと断られた。「そういった商品は他にもあるから」と当時の担当者は一蹴。どこの誰だか分からない人が、突然持ち込んだ商品に興味を示すはずもなかった。 そこで目をつけたのが、当時まだ黎明期にあったネット通販だった。2008年、自力でWebサイトとショッピングカートを作成。浅川社長は「こんな怪しいサイトでよく買い物してくれたな」と当時を思い出し苦笑いするが、開設から1カ月以内に2個の注文が入ったという。たった2個とはいえ、初めて販売できたときの喜びは今でも忘れられない。 その後、Yahoo!ショッピングへの出店も果たし、月に10万円程度は売れるようになった。そんな矢先、思わぬところから連絡が入る。以前に断られた大手量販店だった。商談の末、新宿店での実演販売のチャンスを得る。 だが初日の販売個数はたったの“1個”。しかしその後、実演販売のプロたちから「シミは現場で付けた方がいい」「見せ方をこうした方が効果的」といったアドバイスをもらいながら改良を重ね、最終的には1日200個を売り上げるまでに成長した。
天国から地獄 「3000個の返品」
順調に売り上げを伸ばし、Yahoo!ショッピングだけではなく楽天市場への出店もスタート。2013年のプロ野球楽天イーグルス初優勝の際、テレビなどメディアが賑わい出したタイミングで、楽天のトップページの広告を購入。その結果、わずか30分で3000個もの注文が殺到したという。 しかし、喜びもつかの間。在庫がない中での大量受注に対応するため、急いで容器を取り寄せ液を詰めた商品は、届いた時に液が漏れてしまっており、欠陥品となってしまった。「全品回収です。電話にメールが相次ぎ、ノイローゼになった」と浅川社長は当時を振り返る。 この失敗以来、品質管理には特別な注意を払うようになった。「容器に詰めた後、紙を敷いて容器を横にして、一日は必ず置いてから出荷しています」(浅川氏)。