とにかく服のシミが取れる「スポッとる」が累計80万個以上のヒット 小売店から門前払い、「3000個の全返品」乗り越えた過去
「大切に使ってほしい」環境配慮から決めた価格設定
価格設定には、単なるコスト計算を超えた思いが込められている。「この商品を使って手に入れられる価値はどのくらいなのか」「今後たくさんの人が使ってくれるようになった際、もし余ってしまって捨てられると、川や海とかを汚すかもしれない」など、使う人の体感価値や環境面を考慮し、価格を設定しているという。 20ミリリットル1760円、150ミリリットル9900円のスポッとる。同類の商品よりも、あえて高めの価格設定をしたことで「もう少し安くなったらうれしい」というレビューがある一方で、「高いから大切に使います」という声もあり、絶妙なラインを維持しているようだ。
石油に頼らない新時代のクリーニング
「今後はクリーニングのノウハウを家庭用に変換していきたい」と浅川氏は語る。洗濯は誰もが日常的に行うライフワーク。その作業をよりプロフェッショナルなレベルに引き上げることが、次なる目標だという。 この「クリーニング技術を家庭用に」という構想の背景には、業界の根本的な課題認識がある。従来の石油を使用するドライクリーニング方式は、環境負荷の観点から時代に合わなくなってきている。このままでは業界の未来は厳しい。 そこで浅川氏が注目したのが「ムクロジ」という木だ。世界的に知られる天然洗剤の原料だが、これを蒸留してエタノールを生成し、石油の代替として活用する新しい手法の研究開発を進めている。「世界でまだ誰も取り組んでいない挑戦」(浅川氏)。新たに研究ラボも開設した。 累計80万個を突破したスポッとるは海外展開もしており、台湾や中国、香港などで販売。ドン・キホーテだけでも5万個を出荷したという。 クリーニング店に嫁いだ女性が、顧客の「シミ抜きをしてくれ」というニーズに応えるために奔走した結果、クリーニング技術の民主化から環境配慮型の新技術開発まで進めるとは、誰が想像しただろう。今後の動向にも注目だ。
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