観客はわずか10人、1公演30分――日本最速レベルで「有観客ライブ」再開に臨んだ、地方アイドルの葛藤【#コロナとどう暮らす】
緊急事態宣言の解除後、早くも5月24日に観客入り生ライブを再開したアイドルグループがいる。石川県金沢市を拠点とする11人組、西金沢少女団だ。ソーシャルディスタンスを守るため、180人収容可能な劇場に入れるファンは10人のみ。彼女たちの挑戦は、今後営業を再開する首都圏のライブハウスの「近未来」を示しているかもしれない。(取材・文:宗像明将/Yahoo!ニュース 特集編集部)
感染者が出ても、観客の身元にたどり着けるようにした
石川県金沢市の専用劇場「TEATRO西金沢」を拠点とするアイドルグループ・西金沢少女団が、ライブイベントの再開を告知したのは5月21日のことだった。新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の感染拡大に対しての緊急事態宣言が石川県で解除された5月15日から、わずか6日後。ライブを再開したのは5月24日だが、全国的に見ても、もっとも早い部類だった。 西金沢少女団を運営する一般社団法人ニシカネプロジェクトのプロデューサー・伊勢保彦さんが当時を振り返る。 「石川県でのライブハウスの使用停止要請は5月31日まででした。ライブ再開を告知した5月21日の段階では、県からガイドラインが出ていなかったし、出るのかもわからなかったんです。いつ休業要請が終わるのかも。でも、スーパーやドラッグストア、ホームセンターには、もうマスクすら着けていない人もいて、お客さんもいっぱいいる状態で。だったら、スーパーを上回る対策として、全員に消毒や検温をして、飛沫も飛ばない状態にして再開すれば、何か言われるいわれはないと思ったんです」
結果的に、伊勢さんが打ち出した対策は、後に石川県がライブハウスに示したガイドラインよりも厳しいものとなった。本来は180人収容可能なTEATRO西金沢に入れるのは、ソーシャルディスタンスを守るために、1公演でわずか10人のみ。マスクの着用、入場時の手指消毒、非接触型体温計による検温を来場者に義務づけたほか、ステージと客席の間を透明のビニールシートで仕切った。メンバーとファンの間隔は2メートル。ライブは1公演30分で、終了後すぐに窓を開けて換気をする。