観客はわずか10人、1公演30分――日本最速レベルで「有観客ライブ」再開に臨んだ、地方アイドルの葛藤【#コロナとどう暮らす】
お金のことよりも、今後の不安のほうが大きい
そもそも、10人限定の公演で劇場は維持できるのか。伊勢さんが即答する。 「維持はできないですね。アイドルは、2、3年で辞めてしまう子が多い。その子たちの若い時間がかかっているのであれば、ライブができない期間を長く作るべきじゃないというのが、10人でも再開した一番の理由ですね」 とはいえ、TEATRO西金沢が、1階と2階を合わせると100坪ほどの広さであることは、負担として重くのしかかる。 「メンバーへの売り上げバックは含まずに、うちは毎月の固定費だけで200万円ぐらいはかかります」(伊勢さん) しかし、幸いに春の段階で西金沢少女団は銀行からの融資を受け、当面の資金繰りができていた。その結果、現在危惧しているのは、やはり新型コロナウイルスへの感染だ。 「メンバーにも言っているんですが、メンバーとスタッフは運命共同体なんです。ステージにビニールシートをした状態でパフォーマンスをしていると、内側の空気も遮断されるんですよ。誰かが感染していたら、ライブ中に他のメンバーに移す可能性もあるから、普段の生活では気を付けるように話しています。ファンの方にも、普段から感染予防に務めている人だけ来てくださいと告知しています」(伊勢さん) アイドルは、多くは個人事業主に分類され、持続化給付金の対象になる。オモテさんも給付金を受け取ったが、心配は尽きない。 「今後どうなるかわからないので、給付金は大事に取ってあります。今はお金のことよりも、今後どうなっていくんだろう、っていう不安のほうが大きいですね」
今の状態が続いてもやれるようにしていくしかない
ライブハウス事業者を主体とする一般社団法人ライブハウスコミッションなど4団体が、6月13日に「ライブホール、ライブハウスにおける新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」を策定。首都圏のライブハウスも営業再開に向けて動いている。西金沢少女団のライブの光景は、首都圏でのライブの「近未来」だとも言える。 コロナ禍の前は、オモテさんは石川県だけではなく東京都でのイベント出演も多かった。首都圏のライブハウスはまだ本格的に営業再開できていない。オモテさんも首都圏への「遠征」ができないままだ。 「東京のファンが離れていくんじゃないかなと、とても不安です」(オモテさん) 「ファンの人に細く長く応援してほしい」と考えている伊勢さんは、今後いかに西金沢少女団の活動を維持するかを模索し続けている。 「今の状態が続いても、やれるようにするしかないと思っていて。これを機に、オンラインショップや配信に力を入れています。常設でカメラが4台ぐらいあって、スイッチャーもいて、配信が常にできる状態に持っていきたいです。その上でライブも通常通りに戻していければ、何とかなるかなって思っています」 --- 西金沢少女団(にしかなざわしょうじょだん) 石川県金沢市の西金沢を拠点に活動するアイドル集団。2017年結成。所属するアイドルは、ソロや少人数ユニットとして活動している。 オモテカホ 1996年生まれ、石川県加賀市出身。2013年におやゆびプリンセスのメンバーとしてデビュー。2016年末におやゆびプリンセスが解散して以降は、西金沢少女団とソロで活動。2020年7月にニューシングル「DANCE NOW」をリリースする。