名スカウトが選んだ夏の甲子園で光ったドラフトの逸材
一方、野手の1番手に片岡さんがリストアップしたのは、国学院久我山戦で、15年ぶり史上6人目となるサイクル安打を達成した敦賀気比の杉田翔太朗・一塁手だ。 「バットコントロールが抜群。ボールを止めることのできる選手だ。タイミングやボールを捉えるポイント。このあたりはプロに入って体が大きくなっても、ずっと変わらないセンスと言われるものだが、今大会の出場選手で一番、それを感じるのが杉田だ。しかもサイクルのかかった最終打席に本塁打を打った。サイクルは三塁打が一番難しいと言われているが、相手投手のレベルがどうであれ、ラストチャンスに決めるあたり相当な精神力の持ち主であり“持っている選手”だろう」 片岡さんは、スカウト時代にドラフト候補の野手の見極めに「最初と最後の打席」を見てきたという。 「そこに集中力、精神力が映し出される」というのが理由で、トヨタ自動車時代の古田敦也の上位指名を決めたのも、社会人の最後の打席に打った本塁打が決め手だったという。 「同じ敦賀気比で4番を打つ木下も二刀流ができるほどのセンスがある。レベルにバットを使い、左打席から逆方向に合わせて4安打した技術は秀逸。パワーも兼ね備えている好素材だ」と、木下元秀・外野手も要チェックの野手として候補のグループに加えた。 「センスが杉田、木下の2人ならパワーは、鶴岡東の丸山と履正社の井上。井上はサイズからして申し分ないし、丸山が左右に2打席連続本塁打を打ったのは特筆すべき点だろう」 鶴岡東の丸山蓮・外野手は、2回戦の習志野戦でレフト、ライトへ2打席連続本塁打を放ったが、片岡さんは、「右打者の右への打球はバットの出方、体の使い方が利にかなっていないと飛ばない」という。 1回戦の霞ヶ浦戦で、プロ注目の鈴木寛人に一発をお見舞いした履正社の井上広大・外野手も、187センチ,95キロの肉体と“右の大砲”という部分はプロがプラスアルファで評価する点だ。 またパワー系のスラッガーでは、智弁和歌山の黒川史陽・二塁手を「なかなかいない大型内野手」とリストアップした。 「二塁を守れる大型内野手は、そうはいない。ボールの見逃し方が良く懐が深い。変化球にも対応できる柔らかさがあって長打が打てる。センバツに比べて打ち損じも減ってきた」 次点候補グループには“山梨のデスパイネ”こと山梨学院の野村健太の名前も挙がった。 「1回戦の熊本工戦ではタイミングが合わずに長打はなかったが、3安打したし、“振れる、飛ばせる”という打者は、そうはいない。これは大きな才能。だが、こういうバッターは時間がかかる。すぐプロでなくとも、大学へ進んで、もう一皮むけてくれば、将来的に上位候補になる可能性を残している。こういう選手は追跡したい」